黄昏れヒットマン
□ドゥーチェ
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「ねぇ、骸。沢田綱吉って何かムカつく」
唐突に…若きボンゴレ後継者候補の名前を出す貴女。
「どうしてですか?」
「だって沢田綱吉には指導者がいる」
嗚呼…何かと思えば。
「アルコバレーノの事ですか?彼はボンゴレの指導者ではなく、家庭教師らしいですよ」
「教師も指導者もあんまり変わらないよ」
確かに。
「…それもそうですね。でもそれがどうかしたんですか?」
貴女はゆったりとした足取りでソファに座る僕に歩み寄る。
「指導者が現れてから沢田綱吉の生活や環境が変わった。それが苦痛を伴う事だと分かっていても、怪我をしても沢田綱吉は笑っている」
そう言いながら貴女は僕の隣に座る。
「笑顔でいる事が気に入らないんですか?」
「そうじゃなくて…」と言葉を濁らせる貴女。続きが気になった僕は言葉の促すように頭を撫でてやった。
「私達に指導者がいれば骸も犬も千種もクローム…いいえ、凪も笑顔でいられたんじゃないのかな」
無意識にかは分からないが自分の名前を“もしも”の中には入れなかった。彼女自身どこかで諦めているからだろう。
そんな貴女に僕自身 嘘か本物か判断のつかない笑顔を向けた。すると、苦しげな表情の貴女が僕の両目に映る。
見ていられない。故にいつも表情を見なくていいように抱きしめる。
「…――。」
今からでも遅くはないだろうか。
ドゥーチェを探しましょう。
(あなた方の笑顔を見る為にも)
(“もしも”を憧れではなく現実とする為にも)
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