□ログ
4ページ/7ページ




ある愚か者の話である。
一方の愚か者はある日、世界に拒絶されている気がして己から世界を切り捨ててしまった。
己が見ている世界がいかに小さいかも知らず、己の見える範囲だけが世界だと思い込んでいたからだ。
もう一方の愚か者は世界を拒む事を放棄して、全て受け入れてしまった。
己の小ささも知らずに受け止めるから、本当に手に入れたいものが何処にあるのかも解らなくなっていた。
つまり二人の愚か者は0と100なのである。
有か無かしか選べ無い愚か者が50に辿り着いたのはお互いがお互いを認識した時である。
0と100の間には、大切なものを選ぶ勇気、それ以外を捨てる覚悟が芽生えた。
そしてそれを教えてくれた良く似たお互いに、惹かれ合ったのである。
愚か者は愛を知り、愚か者では無くなった。
自分達こそが世界の一部であり、世界の一部こそ自分達なのである。
全てを失う事も手に入れる事も出来ないが、それで良い。
世界とはそうして選択されてきた上に創られてきたものなのだから。
そして世界になった愚か者は二つで一つの存在である互いと、この世界で生きているのである。


.

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ