□キリリク
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「お」
「あ」

ある日の休日。
ホームランバーを食べたいと言うクマの我が儘に付き合って陽介は四六商店を訪れていた。
そこに兄妹仲良く手を繋いで見慣れた姿が店内に入って来て、お互いに気付き声を上げる。

「よー、何、買い物?」
「うん。テレビ用品買いに来たんだけど、菜々子も行きたいって言うから。そっちは…まあ何と無く解った」
「はは。保護者も大変よ」
「あ!ナナチャン!」
「クマさんこんにちわ」
「コンニチワクマー!」

菜々子とクマもお互いに気付いたのか手をとりきゃっきゃっと楽しそうに談笑し始めた。
蒼夜はちょうど良かったと、菜々子の気が逸れている内にカエレールやらマカの葉やらのテレビで使うものをごっそりと買い込む。
そんな様子を陽介は横から見遣った。

「そんな買うんか」
「切れたら困るしね」
「うう…リーダーの苦労を見た…それ家まで運ぶの手伝うぜ」
「そんな大変でも無いけど。まあそう言ってくれるなら甘える……あ!」
「うわっな、なんだ?どした?」
「いや、スーパーボールクジとか懐かしいなと思って。うわーいつも道具関係しか見てなかったから気付かなかった。あ、これも懐かしい!」

蒼夜は店内を見回して目をきらきらさせる。
いつも落ち着いた判断で皆を引っ張るリーダーが、今はクマや菜々子と同じ様な顔をしているものだから、陽介はぷっと吹き出してしまう。

「…何だよ」
「なんかガキみてぇだな」
「…悪いか」
「いや?可愛いけど?」
「……嬉しくないっ」

ぷいっとそっぽ向く蒼夜に陽介はまた一つ笑い、よし、と声を上げて小銭を取り出した。

「折角だからスーパーボールクジやっちゃう?」
「む、どっちが大きいか勝負するか?」
「じゃあ負けた方はホームランバー奢りな」
「望むところだ」

ふふふと二人不敵に笑ってクジが入った箱に手をつっこみ、一枚ずつ掴む。
それを店主のオバチャンに小銭と共に渡すと、ゆっくりした手つきで袋に入ったそれを取り出し、二人に手渡してくれた。
二人がそれをお互いのに近付けて翳してみると、僅かだが蒼夜の方が大きい様だ。
蒼夜は、にっといたずらっぽい笑みを浮かべて陽介を横目で見遣る。

「俺の勝ちだな」
「くー僅差かー…っ。仕方ない、俺も男だ!ホームランバー奢ってやろう!」
「はは、サンキュ」

わざとらしく悔しそうな顔をした後、陽介はいつもの笑みでホームランバーを4本買うと、クマ、菜々子、蒼夜に1本ずつ手渡した。

「わーありがとうっ」
「どういたしまして」
「ヨースケスキスキ!」
「はは、嬉しくねぇな」
「ヨースケスキスキー」
「ちょ!蒼夜さん!?」
「嬉しくない?」
「…たいへんうれしゅうございます」

赤くなりながら呟く陽介に蒼夜はからから笑い、つられて皆笑い出す。
そうしてしばしアイスを食べたり店内を見遣ったりした後に、陽介は荷物を持って蒼夜と菜々子を家まで送った。
その途中、クマと菜々子が仲良く手を繋いで歩いていて、陽介も蒼夜に「手、繋いじゃう?」と提案したが、素気なく断られる。

「なんか結局買い物付き合わせて悪かったな。休日なのに」
「いんや。珍しくはしゃぐ蒼夜を見れて俺は有意義な休日だったね」
「…あ、そう」

ぶっきらぼうにそっぽ向く姿が可愛くて、陽介は別れを惜しむクマと菜々子からは死角になる位置で素早く口づけた。
蒼夜は真っ赤になって何かを言いかけるが、馬鹿、と一言だけ言って陽介を軽く小突く。
そして二人とも瞬時顔を見合わせた後、何処か照れ臭そうに盛大に破顔したのだった。


―――――


22222キリリク
志之さまへ

まったりした休日です。
スーパボールくじ…通じるネタだと良いのですが(汗)
男の子っぽさが出てると嬉しいです(^^)
どうぞ貰ってやって頂けると幸いですー!

この度はリク有難うございました☆



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