文
□パロ
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「ふわ、当たり前だけど混んでるねぇ」
初日の出を二人で見遣った後、足立と蒼夜は商店街にある神社へと足を運んでいた。
目的は初詣であるのだが、当然神社は同じ様に初詣をしようと言う人で賑わっている。
それでも何とかおさい銭を放り込み−キツネの為に蒼夜は多めに投げ込み−二人で手を合わせお参りした。
「蒼夜くんは何かお願い事した?」
「はい。皆の健康祈願を」
「はは…蒼夜くんらしいなぁ」
足立はそう言いながら二人で引いたおみくじを開けてみる。
中に書かれていたのは小吉で、蒼夜のを見てみると同じ小吉であった。
「微妙だねぇ」
「ですね」
「重大な事がある年です…だってなんだろ」
「………なんでしょう」
蒼夜は曖昧に笑って、くじ結んで来ましょうと先に歩き出す。
それを慌てて追い、蒼夜に習ってくじを結ぶと、不意に少年の視線に気付いた。
「どうしたの?」
「いえ…透さんは何か、お願いしました?」
「ああ、うん」
足立は少しはにかみながら頭を掻くと、優しく笑いながら蒼夜を見遣った。
「蒼夜くんともっと色んな毎日をおくれますようにって」
「……!」
蒼夜は瞬間、泣き出しそうな顔をしてから満面の笑みを浮かべた。
足立はその一瞬に違和感を覚えたが、しかし蒼夜がぎゅっと袖を掴んできたから、直ぐに違う思考に流される。
「どうせなら手、繋ごうよ」
「でも…」
人目を気にして控え目な蒼夜が酷く愛しくて、その手を足立は強く握って歩き出す。
手を引かれて戸惑いながらも蒼夜は、はにかんで幸せそうに顔を綻ばせた。
−だけど、足立は気付かない。
その笑みの裏に、切なさが滲んでいる事を。
共に過ごす日々はあっという間に過ぎて行き、新しい年が始まった日。
時間は音も無く、また確実に流れて行く。
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