□文4
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家に帰るのが嫌いだった。
それまでがどんなに楽しかったとしたって、家に帰れば一人なのだと思い出してしまうから。

夕焼けの道を歩く。
隣にはいつもおどけて見せる笑顔があって、温もりが手を引いてくれる。
繋いだその手は大きくて、力強さにほっとした。

「今日は学校どうだった?」
「テスト近いから皆で勉強会しましたよ」
「勉強会!うはー懐かしい響きだなぁ」

他愛無い会話。
何気ないのに楽しくて幸せなその時間が、続いて。
帰る道が一緒で。

「蒼夜くん、なんか嬉しそうだね?良い事でもあった?」
「透さんと帰り一緒だから」
「そんな事が嬉しいの?」
「はい」

驚いた顔に笑って頷いて見せる。
他の人にとってはたいした事では無いかも知れないけれど。
分かれ道の後、一人孤独に向かって歩く道すがらの寂しさが、堪らなくて泣いた日々もあって。

「一緒に同じ場所に帰るの、嬉しいです。さよなら、しなくて良いから」

特に理解して貰わなくても良い。
自分の孤独を見せたらきっと、悲しそうな顔をさせてしまうから。
それよりも今、幸せなのだと伝えたくてわざと拙い言葉を紡いだんだけど。

「…蒼夜くん」

家にたどり着いて、先に入った背が振り返る。
その顔はただただ優しく微笑んで。

「おかえり」
「………一緒に帰ったのに」
「良いんだよ。言いたかっただけだから」
「……もう、本当、敵わないなぁ…」

気付かれない様に浮かんだ涙を拭ってみるけど、多分、それも気付いているんだろう。
嬉しくて優しいものばかり与えてくれる愛しい人。
いつもおどけて見せるくせに、本当は鋭くて、聡い人。

「透さん」
「わ」

背中に飛び付いて温もりを掴む。
温かくて、少し泣いて。
向き直って抱きしめてくれる腕が強くて、笑顔になって。

「大好き」
「うん。僕も、大好き」

甘い言葉を交換して、紡いだ唇を重ねた。

自分にとっての幸福。
それは今、人の形をして腕の中にある。


−−−−



朔さまへ
仲良し足主。

と言うより幸せな主の話しになってしまいました…f^_^;
仲良し→手繋いで帰る
と言う構図が真っ先に浮かんだもので…
ちなみになんちゃって新婚パラレルの二人だったりします。

ご期待に添えているか解りませんが、貰って頂けると幸いです!
この度はリク有難うございましたー☆



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