□文
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いつからだろう。
蒼夜は黒板を見ながら、ずっと首筋にじりじりした視線を感じていた。
それは此処最近ずっと感じていて、気になってしょうがないのだ。
そろそろ何か聞こうかと思っていた蒼夜は、しかし不意に首筋に触れた熱に固まる。
どうやら陽介の指の様で、それがやんわり肌を撫でて来るから、ぞわぞわとして堪らず後ろを振り返った。
そこにはきょとんとした顔がある。

「…何」
「え?」
「………首、」
「あ、あー、いや、あれ?ほっせーと思って…なんか」
「………」

しどろもどろ言う陽介は何故か困った顔をしていて、蒼夜は問い質すのを諦めた。
ただ、釘はさして置かなければとじと目で陽介を見遣る。

「…くすぐったいから、止めろよな」
「あ、ああ、うん。…ごめんな」

そう言い放ってから前を向く。
しかしやはり相変わらず後ろからの視線は強く、蒼夜は気付かれない様に溜息を吐いた。
同級生の、親友の、男の、指先に触れられて頬が熱くなるなんて。
視線に焦がされる様に胸が熱くなるなんて、一体自分はどうしたと言うんだろう。
解らない。
解らないけど、ただ、触れられた場所が熱い。
蒼夜は自分の中にある熱を帯びた気持ちに名をつけられず、ただ後方の視線を感じ続けていた。





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