□フリリク
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「よぉ、買い物か?」

休日、ジュネスでバイトをしていた陽介は見知った顔を見つけて駆け寄った。
こちらに気付いた少女−蒼はにこりと笑顔を浮かべる。

「うん。晩御飯の買い物。花村はバイトか。偉いね」
「はは。皆に晩御飯作るお前のが偉いだろ」
「うーん。私のは半分趣味だから」
「そっか。しかし趣味であの腕前なら凄いよなー」
「褒めてもお弁当ぐらいしかでないよ?」
「充分ですとも!…まじ月宮の弁当いつも楽しみだし」

そう本音を漏らしても蒼はいつも通りの笑みで、陽介は中々伝わらない気持ちに少し焦れる。
蒼は他人の事には敏感な癖に、自分の事となるととんと疎いのである。

「あのさ、月宮−−」
「あっれー蒼ちゃんだー」
「足立さん」

しかし陽介が更に言葉を募ろうとした時、不意にまた見知った顔がやってきた。
ひょろりとした猫背の男−足立だ。
足立はいつもの暢気な笑みで蒼に声をかける。

「お、今日はシチュー?」
「はい。菜々子のリクエストで」
「良いねー。堂島さんいっつも君の料理べた褒めしてるよー」
「そんなたいしたものじゃないですよ」

わたわたして赤くなる蒼が可愛くてつい頬が緩む陽介だが、しかし見過ごせ無い点があった。
足立がさりげなく蒼の肩に触れているのだ。
陽介はその腕をとって離れさせると、張り付いた笑顔を浮かべる。

「足立さん、仕事サボってて良いんすか?」
「お客さんが増えて良いじゃないの。てか君こそバイト中じゃないのかな?」

ふふふふと二人の間を不敵な笑みと不穏な空気が流れる。
間にいる蒼は首を傾け、しかし火花を散らす二人には気付かないのかにこりと笑った。

「足立さんと花村って仲良いんだね」
「な…っ」
「違…っ」
「あ、早く帰って晩御飯作らなきゃ。じゃあ、足立さんも花村も、仕事頑張って」

そう言って蒼はにこやかに去って行った。
残された二人は蒼の姿が見えなくなるまで手を振っていたが、見えなくなった途端笑顔を引っ込める。

「はぁ…僕は蒼ちゃんと仲良くしたいのになぁ」
「それはこっちの台詞っすよ。…ま、俺らは仲間−友達ですけどね」
「友達ねぇ…ま、取り敢えず晩御飯食べに行って良いか聞こっと」
「…足立さん、あいつのメルアド知ってんすか」
「まあ、メル友ってやつ?…同学年の友達より、大人の男の方が意識はされ易いよねー」
「………!」

じゃ、そういう事で。
足立はひらひらと手を振って携帯片手に去って行ってしまった。
陽介はその後気が気じゃ無く、仕事でミスを連発する始末で散々だった。
しかし。

「ま、僕もまだ堂島さんの部下の人止まりなんだけどね。手作り弁当とか…同級生って羨ましい…」

と嘆いていたりするのだった。
果たして二人の恋に発展はあるのか。
それは誰にも解らない。


−−−−−


璃玖さまへ
足vs花→♀主


こ、こんな感じで良かったでしょうか…!
余りvsネタを書かないのでご期待に添えているか解りませんが、どうぞ貰ってやって下さると有難いです。

リクエスト有難うございました!


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