□文4
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可憐で儚げで、守って上げたくなる。
クラスメートがひそかにそう噂しているのを聞いた事があった。
確かに色素の薄さや線の細さ等の外見を見ると、そう思ってしまうのも無理は無い。
しかし。

「はっ!」

一振りされた刀が一撃でシャドウを切り裂き、直ぐさま刃を反して隣りのシャドウが倒された。
的確で容赦が無い攻撃は圧倒的な強さを見せつける。
男顔負けの力強さで刀を振り回す姿は、とても儚げだとは思えない。
更に言えば。

「皆お疲れさん。気ぃつけて帰れよ」

口を開けば可憐さ等微塵も無い。
完二はクラスメートが見ればがっかりするんじゃないかと思ったが、しかしそれでも良い。
−ライバルは少ない方が、断然良い。

「先輩、送りますよ」
「んー?何だ完二、紳士じゃないか」
「…茶化さないで欲しいんスけど」
「あー良いよ。完二も早く帰んな」

そう言って蒼はひらひらと手を振るが、自分は動こうとしない。
完二は訝しげに蒼を見遣る。

「一緒じゃまずいんスか」
「……鋭い完ちゃんは完ちゃんじゃない」
「……怒るっスよ」
「…………」

蒼は溜息を吐いてくるりと踵を返す。
しかし数歩歩いた所でがくりと細い体が崩れ、完二は慌てて受け止めた。

「…みっとも無いとこ見せたく無いのに」
「あんた足…っ怪我してんスか!」
「…SP無かったから」
「……っ」

蒼が最後に回復をかけたのは他ならぬ完二だった。
それに気付いて舌打ちした完二は、ハンカチを出して蒼が庇っているふともも辺りに手を伸ばす。

「やだ…っ完ちゃんのエッチ!」
「ちょ、ハンカチ巻くだけだっつの…!」

完二は出来るだけ意識しない様にしながらスカートの裾から伸びる足にハンカチを巻いてやる。
それでも少しは回復したのか余り血は出ていないが、傷口がぱくりと開いていた。
完二はまた舌打ちして蒼を抱き上げる。
その行為にいつも飄々としている蒼が珍しく顔を赤くして慌てた。

「ば、馬鹿っ下ろせ…っ」
「馬鹿はどっちだ…っ!」
「………っ」

完二に怒鳴られて蒼はきょとんとし、固まる。
周りに恐がられる少年はしかし自分に粗暴な態度を取る事は無かったから、蒼は酷く驚いた。

「あんた女の子なんだからもっと体、大事にしろよ…っ!」
「………完二…」
「俺らだっているんだから!ちったぁ頼れ!!」
「………ごめん……」

しゅんとする蒼にはっとして完二は自分が熱くなっていた事に気付き、罰が悪そうに咳ばらいする。
そうして冷静になって見れば、腕に触れる柔らかい肌の感触に一気に真っ赤になってしまった。
しかも追い撃ちをかける様に蒼がぎゅっと抱き着いて来て、細身の割にふくよかな胸がむにっと当る。

「せせせ、先輩…!?」
「…だってリーダーなんだもん…リーダーは皆を守るものだもん…。女だからって守られるのは嫌なんだもん…」

呟きは何だか幼い響きを持って、大人しくなると途端に蒼が小さく感じる。
頼りになって強くて包容力があって。
だけどやっぱり女の子で。

「…あんたが皆を守るなら、俺ぁそんなあんたを守るっスよ」
「完二…」
「駄目っスか?」
「……駄目じゃない」
「嫌なんスか?」
「………良い、と思います…」

俯いた顔がちらりと完二を見上げて、えへらっと笑った。
美しい顔に似合わない気の抜けた笑みは、しかし少女が見せる中で最上のものである。

「完ちゃん好き好きー」
「ば…っあんまくっつくなっての…っ」
「えへへ」

赤くなって戸惑いながら、しかし完二もいつの間にか笑っていた。
美しくて凛とした外見よりも、自分に見せる横暴で甘えたがりな内面の方がずっと魅力的に思う。
守られる事に慣れてなくて、優しくされるとしかめっ面になって。
そんな蒼が完二には凄く可愛く思えるのだ。

「先輩」
「うん?」
「……俺もあんたが好きだ」
「うん」

完二がはにかみながらそう囁くと、知ってるーと蒼は悪戯っぽく、しかし嬉しそうに笑ったのだった。


−−−−−


律さまへ
完♀主。

うちの完主は基本的に主が完二を振り回してますが、♀主だと更に振り回してました(笑)
完二は純情少年なので、♀主だとたじたじになってるかと思います(´▽`)

貰って頂けると嬉しいです!
この度はリク有難うございましたー☆



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