負けないぞ!祭り
□続・青と金のキセキ
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人通りが少なくなった廊下を、急ぎ足で歩いていく。
愛しい人がいる城へ。
角を曲がったところの、医務室のプレートを確認して、ノックした。
応えた内側からの声に、不意にドキドキした。
「兄さん」
「おう。おまえ、今日はまだ仕事か?」
窓の傍に、愛しい人の存在があった。書き物をしていたらしいエドワードは、立ち上がりカーテンを締める。
「もう、終わったよ。待っててくれたの?」
「ああ。今日くらい一緒に帰りたくて…って、先に帰って飯の用意してたほうが良かったか?」
「ううん。一緒に帰ったほうが楽しいよ。ありがとう、兄さん」
「んじゃ、帰るか!」
うーん…と伸びをした兄の腰をつかまえた。
「お疲れさま、兄さん」
おそらくはロイも仲間も、エドワード以外は見たことがない優しい笑みで、エドワードを労る。
「そんな疲れてねえよ。これくらい。座ってばっかで、腰が痛くなりそう」
「それは困るかも」
お互い見つめ合って、鼻をくっつけ、クスクス笑う。
「アル」
アルフォンスの首に腕を回して、軽く力を込めた。察したアルフォンスも、自然にエドワードの唇を狙う。目を閉じて、重なる唇から流れる愛しいという気持ちは、二人にとってのキセキ。
「おまえの軍服姿、初めて見たな」
「そうだっけ?で、どう?」
「まぁまぁイケる…かな。うん。オレの弟だしな」
「なんだよ、それ。素直じゃないなぁ、兄さんは」
「オレはいつだって素直だろ?」
「そうかな?」
キスを強請るエドワードは、淫らな表情のくせにどこか神聖なものがあって、まったくタチが悪い。
「…ウソだよ。カッコイイって…思った…」
兄からの告白に、一瞬目を見開き、再び優しく見つめる。
「兄さんも、白衣似合うね。僕はドキドキだった」
「過去形?」
「訂正。今もドキドキしてて―――脱がせたい。その肌に、たくさんキスしたい」
「―――帰ろ。オレたちの家に」
「うん」
早く帰りたい。自覚した途端、欲情していた。
白衣を脱いで、椅子の背に掛ける。
アルフォンスが、扉を開けて退室を促した。
そして。
扉が、パタンと閉まった――――
end