今日の兄さん(2014年)

□12月10日
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「えっと、アル、フォンス。」
「な、何でしょう。」
「この場合、ふ、風呂かな。お前、先に行ってこいよ、てか、行け。」
年子の兄であるエドワードが、次の春には家から離れた大学に進学することが決まり、家を出て一人暮らしを始める。一つしか違わないが、されど一つ年下であるアルフォンスは、残りの高校生活のため地元に残るので、初めて兄弟は離れて暮らすことが決まっていた。

実の兄弟であるが、互いへの恋心は自覚があったし、なんとなくその想いが独りよがりでもないことにも、気づいていたのだが、これまでは家族の縛りやら、覚悟やらなんやらで、そのボーダーは越えずにきた。

でも、これからは違う。
呼吸をするように当たり前に傍にあった存在がそうでなくなる。
誰かに奪われてから、地団駄したところで遅い。これまでそうならなかったことの方が奇跡なのだ。
では、どうするか。
冬が来たらスノーボード旅行に行こうと、夏のバイトで貯めていた金を握りしめて、二人で、ああだこうだと悩んで行き着いた先がラブホテル。
いくら天然な親夫婦とはいえ、家では無理だ。きちんとしたホテルは、手が届かない。スノボー旅行だって諦めたわけでは無い。ということで、ラブホテル。

とりあえずは、子供の頃のキスはノーカンとして、二人の初めてのキスは、夜景の見える丘の上で済ませた。ロマンチストの弟に付き合ったと見せかけて、実はエドワードもシュチュエーションを、重んじるのは嫌いじゃ無い。
その為だけに、自転車を立ち漕ぎして丘に上がり、ベンチで、唇をそっと重ねて、また爆走して丘を下った。ハボック先輩の、オススメの、人目につきにくい、この類にすればまあこぎれいというホテルへ滑り込んで、現在に至る。
「先に、お風呂いただきました。に、兄さん次どうぞ。」
「お、おう。」
ここまで来ても、覚悟などできてはいない。風呂の中で頭を抱えるエドワードと同じように、またアルフォンスもベッドの上で悶えていた。
そう、覚悟はここに来てもまだできていない。
だいたいこれまで兄弟で生きて来たのだ。これからだってそうだ。そのつもりだった。
「アルー!シャワー、なんかわかんねー!」
「ああ、ちょっと待って。」

浴室からのエドワードのSOSにアルフォンスが向かう。
確かに、シャワーと格闘している兄がそこにはいたのだが

「兄さん、勃ってる…」
「や…だって、お前も、…勃ってるじゃん?」

互いのそれに触れ合って、覚えたてのキスをして、それからは実はあまりよくわからない。欲望のままに暴れた気がする。高校生の精は尽きぬことを体感したのも初めてだ。

ちなみに、キスこそ初めてであったが、互いの性器に触れることは初めてではない。この兄弟、所謂抜き合い仲ではあったのだ。

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