カフェ『アルケミスト』
□doll
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「いらっしゃいませ。お席にご案内いたします」
店の入り口で出迎えたエドワードを見て、カフェの常連客が硬直している。
目をこれ以上ないくらい見開いて、息をしてるかも不明なくらいのフリーズっぷりだ。
「お客様、こちらのお席にどうぞ」
入り口から一歩も動く気配をみせない客に、内心舌打ちをしたいのを隠しながら、エドワードはニッコリ笑顔で席に誘導した。
「メニューをどうぞ。本日の日替わりスイーツは『りんごのタルト・タタン、バニラアイス添え』です。ご注文お決まりになりましたら、お申し付けください」
「あ…はあ、どうも…」
「失礼します」
ヤケクソのように、満面の笑みを浮かべ、エドワードが下がった。
今日は、これで何人目だろう。
いっそ笑ってくれたほうが救いがあるのに、と、エドワードは思う。
今日に限って、客たちが入り口で硬直する理由。
それはエドワードにあった。
ふんわりした袖の、茶色のミニのフレアスカートのワンピース。 冬の針葉樹を思わせるような鮮やかな緑のエプロン。
首には大きな白いリボン。ご丁寧に、結び目には可愛らしい鈴までついている。
そして。
耳、アンドしっぽ。
そう。
エドワード(本日フロア担当)は、猫耳メイドさん姿だった。