今日の兄さん(2011年)

□12月9日
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「えー、今年の年末年始も、医務室勤務は昼夜常時2人は待機して下さいとのことですー」
 表情をストンと落としたようなエドワードが、看護師を前にそう伝えた。
「せんせー、めっちゃイヤそう」
 その無表情ぶりに、トリアとピラウがクスクス笑う。トリアたちは軍看護師キャリアは、エドワードより長いので、こんなことは毎年のことで慣れっこだ。
「だってさー、オレがこんなに頑張って働いてるのに、ヤツらは真夜中でも楽しくケンカしてるんだぜ?」
「そんなこと言って、去年からの年末年始は、先生も参戦したそうじゃないですか」
 次々に医務室に入ってくる重軽傷者に業を煮やし、ピラウが止める間もなく医務室を飛び出していった。問題の騒動の中に自ら飛び込んで五、六人ほどキッチリ片付けてから、何事も無かったかのように医務室に戻ってきたと、トリアは聞いている。その間わずか30分ほどだったらしい。
「あー、そんなこともあったなー。若かったなー、あの頃のオレ」
 エドワードにとっては、とっくに過去の異物として、心の広く深い奥行きの棚に放り込んでいたらしく、なんだか無責任なくらいしみじみとした表情だ。ある意味、若いって素晴らしい。
「せんせーは、年末年始のご予定はー?」
「オレ?オレは、お泊まり勤務が決定してます」
「…おめでとーございます」
「ありがとう」
 そうエドワードがにっこりと微笑んでみせたら、看護師二人がイヤそうにした。まったく、失礼な。
「先生、エルリック少佐も年末年始は御出勤ですか?」
 トリアが、ふと思い立って聞いた。
「うん。泊まりだって。無能の下も大変だよな」
 同意もできず、曖昧に笑うだけだったが。
 そうか、やっぱりとも思った。
 口では何とでも言ってても、内心は弟と一緒に勤務なら嬉しいんじゃないか?美貌の大天使様は、極度のブラコンで末期だ。
「せんせーって、生活基準が弟だよね」
「だって、弟だし。アル、可愛いし」
「エルリック少佐に、ケガなどしないようにって仰って下さいね」
 ケガでもしようものなら、何をどうするか予想もできない。ケンカなら相手を抹殺、事故なら原因を抹消しそうだ。見かけによらず過激な軍医殿なら。
「新年明けたら、交代で休暇取ろうな〜」
 きっと弟に合わせるのだろうな。
 エドワードと共に勤務して、早二年近く。
 看護師たちの、エルリック兄弟への理解度は格段に上がっている。





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