青と金のキセキ3

□愛のままに ワガママに
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 その日夜勤を終えたアルフォンスは、帰る間際に仕事が入ってしまった。ほっぽって帰るのも何だし、すぐ終わるだろうと手をつけたら、結局昼近くまで残業するハメになってしまった。
「やっと終わった…」
 やれやれと、片付いた書類を机でトントン揃えて置いた。
「お疲れさん。なあ、大将、今日は休みだっけ?」
「今日ですか?いえ、休むとは聞いてませんが…」
 ハボックに聞かれて、頭を傾げた。
「そうか?なんか、まだ来てないらしいぜ。事務の姉ちゃんが言ってた」
 時計を見ると、もうとっくにいるはずの時間だ。エドワードは平日日勤なので、出勤時間が変わることはほとんどない。
「まさか、また拉致られたんじゃないだろうなぁ?」
「まさか…」
 ドキッとする。
「いや、誘拐されることに関しては、大将はプロだろ。誰彼構わず、ひょいひょい捕まってるし」
「シャレになりませんよ、ハボック少尉」
「まあな」
 拉致じゃなくても、事故とか事件とか、アクシデントを吸着するランクは神レベルな兄だ。アルフォンスの鼓動は、どんどん早くなるような気がする。
 また、テロリストとかに捕まってたらどうしよう。いや、それなら脅迫状とか声明文が来るはずだ。いや、声明文はまだ出さないとか、そんな要求とか無い殺戮者たちもいるかもしれない。
「おい、アルフォンス。大丈夫か?顔色悪いぞ」
「あ、はい…」
「冗談だって!急に休んだのかもしれないぜ。何か急用とかさ」
「でも、それなら事務局の方ならわかりますよね。電話連絡が入るはずだし。兄は無断欠勤するようなタイプじゃいですから。仕事に関しては、マジメですよ」
「うーん…それもそうだよな…」
 さすがに不審に思ったハボックも、唸りながら考え始める。
「…僕、とりあえず家に帰ってみます。もしかしたら、自宅で具合が悪くて眠っちゃって、起きられないのかもしれないし」
「そうだよなぁ…んじゃ、お疲れ」
「失礼します」
 ロイにも一声かけて、帰路についた。
 司令部を出るときは早足だったのが、いつの間にか駆け足になっていた。
「ただいま!兄さん!」
 シン…と静まり返った室内が不気味だ。
「兄さん?」
 寝室を覗いても、きちんと整えられたベッドがあるだけだった。
 背筋がゾクリとする。
 まさかと、一生懸命浮かんだ考えを打ち消していた。
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