青と金のキセキ3

□晴れ着
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 窓から、昨夜から降り続く雨をぼんやり見ていた。

「兄さん、そこは冷えるよ」

 耳に心地良い声で呼ばれて、振り向くとアルフォンスがいた。

「アル」

 愛用の膝掛けを持ってきてくれた弟が立っている。その笑顔を見ていたら、顔が緩むのを自覚して苦笑に変わる。

「何か考え事?」

 フワリとフリースの感触の後、ほわほわと脚が暖かくなった。
 会話の途中でも、耳に入ってくる雨音はずいぶん大きく、先ほどよりも降りが激しくなったように思われる。明日仕事なのに…と呟いた。

「ちょっとな…」
 
 また長くなった髪を撫でられる。弟の好みで年を追うごとに長くなる髪は、弟いわく絹糸のような手触りなんだそうだ。生憎それほど頓着してないので、誉められてもああとかうんとか生返事していたら、いつの間にか髪の手入れは弟がするようになった。面倒だろうって切ろうとしたら、烈火のごとく怒られた。

「おまえに…結婚式の晴れ着、着させてやりたかったなって…」

「なんだ、そんなこと?」

 耳元で笑われた。くすぐったい。首をすくめたら、また楽しそうに笑われた。

「オレ、けっこう真面目なんだけど」
 
「あ、ごめん。でも、僕にしたら『そんなこと』なんだもん」

 もん、とか言うな。可愛いやつめ。

「おまえ、絶対似合っただろうなって思った。ほら、事務の女の子が結婚式だったろ?昨日、事務局行ったら、他の女の子が写真見せてくれた。すごく幸せそうで、いい夫婦になるって感じ。でも、内緒だぞ?新郎のほうは、おまえのほうがかっこいいって思ったんだ」

 だから晴れ着、タキシードか。

「兄さんが望むなら、僕はいつでも着るつもりだよ。心の準備は、遠にできてる」

 そんな事を言われたら、本気にしてしまいそうだ。

「ウソ…」
 
「ウソじゃない。でも、その時は兄さんが横に立ってくれないとイヤだな」

「オレは…別に…」

 どうしよう。嬉しい。
 本気で考えてる、自分が怖い。

「いざとなったら、余興で済むよ。ね?写真だけでも撮る?」

「本気か?」

「本気だよ」

 柔らかな唇が、誓いのキスのように重なった。

「…晴れ着は、オレから贈らせてもらえるか?」

「僕に似合うのにしてね」






 しばらくして撮られた写真には、至福の笑みのエドワードと、純白のウェディングドレスに身を包み憮然としているアルフォンスが、夫婦のように寄り添い写っていた。


end
 

うちの兄さんは、弟はママ似で可愛いと思ってますから!

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