青と金のキセキ3

□6月の雨
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「わっちゃー!やっぱ降ってきたよ…」
 エドワードが一日の勤務を終える頃、待ち構えていたかのように降ってきた雨は、見る間に勢いを増していった。
 朝は快晴とはいかないが、そこそこ雲が切れていたのに。
「あー…アルにまた怒られそう…」
 アルフォンスにあれだけ言われてたのに、傘を持ってこなかったのは自分の責任だ。
「…走るか」
 誰かに傘を借りるのも面倒くさい。
 自宅まで全力で走れば、エドワードなら10分ちょっとだ。この上風邪でも引いたら何て言われるかわからないので、ついでに玄関に入ってからのシミュレーションもしておく。
「玄関入って服脱いで、着替え出して、シャワー浴びて着替えて…よし、完璧!」
 いつもアルフォンスに言われてる事を踏まえた、完璧な計画だ。よし、これで行こうと、雨の中に飛び出そうとした。
「エルリック先生?」
「あっ、あ!?」
 踏み出した足を止めるために、つんのめりそうになる。
「傘、無いんですか?」
「あ、ああ、うん。忘れちゃってさ」
「良かったら、一緒に入っていきません?私の傘、大きめですから」
 にっこり笑いながら、傘を示される。
「え、でも…」
「先生、まだ雨に濡れると冷えますよ。機械鎧、体が冷えると痛むんじゃないですか?」
 それはそうなのだが。
 エドワードが躊躇してるうちに、傘を広げて押し付けてきた。
「身長、先生のほうが高いので、傘お願いします」
「あっ、うん」
 持たされた。
 何より、隣のやつより身長が高い。
 ちょっといい気分だ。
「うん。ありがとう。家、どこ?」
 エドワードの家に先にと言ってくれたが、女の子にそこまでさせたら可哀想だろう。そう思って、彼女を送って傘を借りて帰ろうと思った。
 聞けば、彼女のアパートもわりと近い。
「助かったよ。走って帰ろうと思ってたからさ」
「この雨じゃ、ずぶ濡れになりますよ」
 他愛ない会話をして、けっこう楽しく歩いた。
 ほどなくして彼女の自宅に着き、傘を借りて帰ろうとした時。
「先生、良かったらこれどうぞ。甘いもの、お好きでしたよね?」
 小さな瓶詰めを渡された。
「…ジャム?」
「うちの実家で作ってるリンゴジャムです。シナモンが入っているので、トーストに乗せると、ちょっとアップルパイみたいで美味しいんですよ」
「へー…いいの?」
「ええ、どうぞ。傘は司令部に持ってきていただければ」
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