青と金のキセキ3

□ジェラシーク・パーク
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 それは突然の出来事だった。



「少将、少しお話があるのですが、宜しいでしょうか?」
 めったに自分からは言い出さない副官ホークアイ大尉が、そのヘーゼルの目を真っ直ぐにロイに向けた。
 長年の経験から、見た感じ真剣であるが切羽詰まった様子はない。むしろ、柔らかく閉じられた口元から、なにか楽しそうな感じがする。
「何だね?言ってみたまえ」
 幸いにも、ここ、司令官執務室には司令官であるロイとこの副官の二人きりだ。もしやこれは、何か人生に関わることではないか?いやまさか、クールビューティーで通った彼女に限って。いやいや、彼女だって女だ女性だ適齢期だ。失礼ながら、彼女に相応しい力量の男は自分しかいないだろう。彼女だって、一人の男性に優しく包まれる時間を欲しているに違いない。ここは一つ…
「女性主催のコンテストを開催する許可をいただきたいのです」

「…………は?」

 麗しの副官は、見たことがないような満面の笑みを湛えていた。





「ミスター軍部コンテスト?」
 聞き慣れない言葉に、エドワードは首を傾げた。
「ええ、この司令部の女性主催で、顔・ルックス・特技・体力など総合して司令部で一番な『ミスター東方』を選ぶそうです」
 トリアがつらつらと答えてくれる。
「ふーん。じゃあ、アルに決まったようなもんだな」
 このブラコンが!と、口に出さないのがオフィスマナーだと、きちんと心得ている看護師たち。
「でも、東方司令部の男性全員対象ですからねー。エルリック少佐も人気ありますが、ちょっと若すぎて…って人はいるかもしれませんよー」
 ピラウは、こういうお祭り騒ぎが大好きだ。すでに瞳をキラキラさせている。
 それもそうかと、エドワードも納得した。
「でもさ、普通はミス東方とかって女性のコンテストじゃないの?」
「女性に順位をつけるのはセクハラですよー」
 トリアも、そうそうと頷いている。
 じゃあ男性ならセクハラじゃないのかとエドワードは、今度は逆方向に首を傾げた。
「…先生もいいセンいってますよ」
「オレ〜?無理無理!そーいうの興味ないし」
 無自覚なのも限度があるだろう。東方の美人軍医としてファンたくさん抱えてるくせに。
「でも先生、勝手に選ばれて勝手に投票されますから」
「え、そうなの?」
「そーで〜す。優勝すると、金一封とペアで有休3日間ですって。せんせー、本気で頑張ってみれば?」
「ペアって?」
「自分が指名した相手なら、誰でもいいそうですよ」
「ふーん…ちょっといいかも…」
 その気になったらしいエドワードを見て、看護師たちはニンマリした。
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