青と金のキセキ

□青と金のキセキ5
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「あー…あんたもだなぁ…ま、これからもっと熱出るけど、1週間も安静にしてれば治るから。処方箋出すから、帰りに薬局で貰ってね。あと、今日はこれで帰宅して。あちこち感染っちゃうから」
 エドワードは、本日4人目の急性感染症の軍人を診察していた。近頃アメストリス全域で流行りだした、風邪に似た感染症は、当然軍人たちも例外ではなく広まり始めていた。具合が悪くなったら自宅で寝ててくれれば、そうあちこちに広まらないものも、ちょっとやそっとの発熱では欠勤しにくい現状もあり、ここ東部司令部でも何人かが発症してしまっていた。そして微熱程度と、出勤しちゃって具合が悪くなった軍人を、エドワードが診るハメになるわけだ。
 予防法としてはワクチンが有効で、エドワードたち医療従事者は優先して接種されているが、今日は午後から軍部内でも一斉にワクチン接種の注射をすることになっている。
 処方箋を渡すと、その軍人は礼を言って医務室を出ていった。診断書はここの司令官に直接渡す。伝染病なので、強制的に休暇を取らせる都合上からだ。
「あー、なんか増えてるよなぁ…今日ワクチン接種じゃ遅いんじゃねえ?」
「でも、しないよりマシでしょう」
 手を洗ったエドワードに、タオルを渡しながらトリアが苦笑する。
「注射か…トリア上手なんだから、オレの代わりにやらねぇ?オレ、アシスタントするから」
「ダメですよ」
 確かに、エドワードにワクチン接種の注射をしたのはトリアだった。エドワードよりナースとしてのキャリアはあるトリアとピラウは、思いっきりがいいせいか注射が上手い。エドワードも思いっきりが悪いわけではないのだが、腕前はまだイマイチだった。
 そして今日は人数が人数なので、エドワードが接種、トリアが薬液セットして注射器を渡し、ピラウがその後片付けと注射器の煮沸消毒という流れになっている。明日はトリアとピラウが交代する。
「サクッと終わればいいな〜」
「そうですね…」
「お茶で〜す」
 ピラウが、先日からハマってるらしい香りの良い紅茶を淹れた。
「ありがとう、ピラウ。あ、お茶飲んだらお昼行ってきなよ。トリアも」
「え、でも…」
「まだちょっと早いですよ?」
「いいよ。たまには、のんびりしてくれば?午後から忙しくなるしさ」
 もちろん、二人のナースに否やは無かった。
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