青と金のキセキ

□青と金のキセキ4
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 急ぎの仕事もない夜勤なんて、退屈なだけだ。だから、ついつい無駄話が多くなってしまうのも、仕方ないと司令官ロイ・マスタングは思っていた。幸か不幸か、数少ない女性士官である有能な副官はいない。ロイなどは夜勤なんてしなくても良い身分なのだが、そこはそれ、つい習慣のようになってしまっているサボリのツケが溜まって、にっちもさっちもいかなくなり必死に処理しているうちにこんな時間になってしまった。もうこうなったら自宅に帰るより、ここで寝ちゃったほうが楽だと判断したからだ。幸い明日は定時で帰れるくらいには、仕事も片付けてある。仕事も終わり、大部屋で不味いコーヒーなど飲みながら、部下の話に耳を傾け一服していた。
「エルリック少佐は、恋人はいらっしゃるのですか?」
 アルフォンスの部下であるハワードの発言に、ロイを始めとするハボックやブレダは飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「うん。いるよ」
 そして、アルフォンスの応えに、本当に吹き出してしまう。
「え、おまえマジか?」
「僕だって、もう成人男子ですし。恋人くらいいても、おかしくないですよね」
「そりゃそうだけどよ。おい、ハボック、先越されるぞ」
「うるせー。いいんだよ、俺は。しばらくは独身生活を楽しむんだから」
 つい先頃まで、女ホムンクルス絡みで大怪我を負っていたハボックには、まだ女性にトラウマがあるのかもしれない。
「しかし、ハボックはともかく、泣く女がたくさんいそうだな…」
 皆、うんうんと頷く。将来有望で有能な、若きイケメンにはそれこそ一山幾らってくらいの手紙、所詮ラブレターが届いているのを、面々は知っていた。ロイのように美辞麗句を口にするわけでないが、そこがまた自然体でいいらしい。今や、そのうちロイを越えるかとも囁かれるほどだった。
「どんな方ですか?」
 エルリック少佐ほどの方の恋人ならさぞ美人なんでしょねと、更に突っ込んだハワードの質問に、なんとなく現在を感じているロイの背中には何やら冷たいものが流れる。いやまさか、と思うが完全否定できないのが、更に追い詰められた気分だ。
「美人だよ。僕はアメストリス一の美人だと思ってる。優しくて、頭が良くて、僕にはもったいないくらいの人だと思ってる」
「へー…ずいぶん惚れてるんだなアルフォンス」
 ブレダの発言にハボックもニヤニヤと笑っていた。
「年上か?年下か?」
「…年上です」
「へー…年上か。それじゃさぞかしアッチのほうも…」
「そこらへん、どうよ?ほら、ぶちまけちまえって!」
「…僕で暇つぶししてますね?」
「いやいや、若い仲間が万が一悪い女に引っかかったら可哀想だからな。アドバイスしてやろって、親切な気持ちだよ!」
 言葉とは裏ハラに、どうも面白がってるのを隠していない。
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