青と金のキセキ

□青と金のキセキ3・前
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 軍の食堂は、そこそこの味だが量だけはしっかりあって、体が資本の軍人たちにはありがたい存在だ。不規則になりがちな勤務体制なので、メニューの差はあれども24時間食事が出来るようになっている。
 とは言え、やはり混雑するのは昼食時だった。
「今日はまた、特に混んでるね。雨降ってるからかな」
 部下とランチ休憩に入ったアルフォンスは、ため息混じりにそう呟いた。
 普段は外に食べに行く連中も、今日は雨を避けて食堂を利用しているのだろう。とにかく湿度が高く、建物内も結露が酷くて鬱陶しい。布地の厚い軍服は、湿気を吸って重いような気がする。
「ですね。あ、エルリック少佐、運びますから先にお席についててください」
 食事を楽しむザワついた中をぐるっと見て、ハワード軍曹が空いている席を見つけた。
「あそこ、空いているようですよ」
 そのテーブルだけいくつか席が空いている。
「あれ…」
「じゃあ、取ってきますから!」
「あ、じゃあコレ!ごめん!」
 すかさず食券を渡す。ハワードはそれを受け取り、カウンターに並びに行ってしまった。
 その空間の中心には、見紛うことなど決してない、至高の金色が座っていた。
「兄さん」
 当然のようにそばに行き、声をかける。
「兄さんもお昼?」
「アル」
 弟を見ると、そりゃあもう嬉しそうに、ぱあっと花開くような笑みを浮かべた。まるで、長く離れていた恋人同士の、感動の再会のようではないか。見てるほうが照れて赤くなってしまう。周囲の人間も、思わず目を反らす。
 もちろん、上機嫌になったアルフォンスは、エドワードの正面の席に座った。
「アルも今、飯か?ミネストローネ、美味いぞ」
「ホント?楽しみだなあ」
「でも、アルが作ってくれたやつのが美味い」
「じゃあ、また今度作るね。僕は、兄さんが作ってくれたオムレツと一緒に食べたいなあ…あ、ありがとう」
 話してると、背後から気配を感じたアルフォンスは、ハワードからトレイを受け取り、隣に座るよう促す。なんだかボーッとした様子だ。
「どうしたの?」
「い、いえ、なんでもっ!」
 なんでもないにしては、ハワードの顔が赤い。
「そう?あ、ハワード軍曹、僕の兄さんのエドワード・エルリック。ここの軍医だよ。兄さん、僕の隊のハワード軍曹」
 簡単に二人を紹介する。
「は、はじめまして!エルリック少佐にはお世話になっております!」
「あ、いーよ、いいから。飯食えよ」
 立ち上がり敬礼しようとするハワード軍曹に、エドワードは手をヒラヒラとさせて食事をすすめた。
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