夜想う曲―ノクターンを君に ―

□髪
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 美しい兄の体を貪るように抱く。
 兄にとっての『食事行為』を示す、通常より長く伸びた金の髪と赤い瞳。
 アルフォンスにだけ許した蕾に熱杭を打ち込まれ、真紅に変化した瞳を潤ませてうっとりと妖艶に微笑む姿は、吸血鬼だからこその媚態なのか。
「あっ…はあ、あ、んんっ…」
 細い腰を掴んで揺さぶるアルフォンスの瞳にも、舌なめずりするような雄の笑みが浮かんでいる。
「美味しい?兄さん…」
「ううっ…あっはぁ…」
 アルフォンスの先端から零れているはずの欲液は、エドワードの体内に触れたとたんに吸収されてしまっているらしく、いつまで抱いていても淫らな水音はしない。

 ――エドワードの飢えを満たすまで。

 リビングには、エドワードの嬌声とアルフォンスの荒い息づかいだけが響く。
「ああっ!!」
 エドワードの華芯が弾けると、中心を侵しているアルフォンスの肉楔を、灼け爛れた襞が吸い付き溢れた欲液を搾り取っていった。一滴たりとも残すまいとするかのように、強く。
 アルフォンスがズルリと自身を抜いても、後孔から白濁の汁は流れることもなく、したがってソファが汚れることもない。
 赤から金色へゆらゆら変わる瞳が、アルフォンスのお気に入りだった。
 貴石のように、美しいそれ。いつまで見ていたいと思う。
「兄さん、大丈夫?」
「うん…」
 食欲が満たされたせいか、目蓋が重くなっているようだ。
 うとうとしだした瞳は、すっかり金色に戻っていた。
 しゅるり…
 長く伸びていた髪も、本来の長さに戻ろうとする。
 ズッ…
「ん?」
 ズッ…ズズズズズ!!!!
「わあっ!」
 ゴツッ!
 長く長く伸びていた髪が、テーブルの脚に絡みついていたのだ。
 そうとは知らず、元の長さに戻ってしまった髪は、安定しているテーブルよりエドワードを引きずってしまった。
 おかげでエドワードは頭を強打するハメになってしまった。
 ケガはないが、あってもすぐ治ってしまうが、その衝撃で甘い眠気はすっかり覚めてしまった。
 これも吸血鬼ゆえの悲劇なのか?
「…ちょっと違うよね」
 アルフォンスは誰ともなしにつぶやく。
 そして、髪をほどいてやるべく、裸でジタバタもがいているエドワードに近づいていったのだった。


end

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