夜想う曲―ノクターンを君に ―

□スズメのなみだ
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 アルフォンスが大学へ行ってしまうと、エドワードにはやることがない。
 以前、洗濯でもしようとして洗濯機を壊しかけてから、尚更アルフォンスには「兄さんは好きなことしてて」と言われるようになった。遠回しに「何もするな」ということだろう。そのくらいエドワードにだってわかる。
 もっとも、洗濯機壊しかけたのだって、このエドワードのマンションには洗濯機が無かったのでアルフォンスのアパートから運んできた洗濯機だったから、使い方がよくわからなかったためだ、とエドワードは思っている。
 エドワードのマンションには、冷蔵庫も洗濯機も、生活に必要と思われてる家電の類いは一切無かった。今あるものは、アルフォンスが呆れながら持ち込んで調えたものだ。
 服はクリーニングに出してたし、冷蔵庫も物を飲み食いするわけじゃなかったからいらなかったとエドワードは弁解したが、そんな言い訳はアルフォンスにばっさり切り捨てられた。
 アルフォンスは人間だから、きちんとした生活を営んでいかなけばならないと、ちゃんと分かっている。
 家事も、大学も。
 普通に生きていく、普通の人間だから。
「…いいともー!!」
 テレビに合わせてコブシを振り上げても、さっぱりつまらない。
「はあ…」
 今日は、午後一時間授業で、バイト行くって言ってたっけ。そんなことを、つらつら思い出した。
「よし!授業参観しちゃる!」
 鳥にでも変幻して、こっそり見るぶんなら分からないだろう。自分の変幻は完璧だ。
 そう思っているのはエドワードだけなのだが、あいにく今はツッコミ入れる人間が誰もいない。アルフォンスがいたら「金色の小鳥が飛んでたら、小学生だって気がつくよ」と言うだろうが。
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