夜想う曲―ノクターンを君に ―

□変幻@〜B
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『変幻』



「…兄さんもコウモリとか蜘蛛とかに変幻できるの?」
「できるぞ〜!当然!」
 胸を張って威張るエドワード。
 吸血鬼といえば、コウモリや狼や霧にまで変幻自在なのも有名な話だ。
「どんなの?」
「オレは猛獣が得意だな…」
「ふうん…」
「あ、信じてないな?怖くて、おまえだって震えあがるぞ!」
 イマイチ想像できないようなアルフォンスに、息巻くエドワードは真剣だ。
「…やってみてよ…」
「おう!…怖くて失神しても知らねーぞ〜!!」
 自信満々に、エドワードが構成する粒子のようなものに変わり、かりそめの姿に変幻した。
 アルフォンスの喉が上下する。
「…に、兄さん…」
『どーだ!怖いだろう!?ガァァァァ!!』
「にゃぁぁぁ!!」
 エドワードの声もアルフォンスに聞こえてるはずなのだが。無意識にか意識的にか、完全に無視されている。
「にゃぁぁあん!にゃん!にゃー!!」
『どーだ!?アル!!怖くて声も出ないだろう!?』
「カワイイ!!可愛すぎだよ、兄さんっ!!」
『ぐえっ…離せ〜』
「にゃっ!にゃあぁ!」
 アルフォンスは、手のひらサイズ(約20センチくらい)の元兄を抱きしめる。
 そう、そこには、とてもじゃないが恐怖感など粉ほども感じない、シッポが長くて金色のフワフワな子猫がいた。
「ウソみたいに可愛い!モコモコだぁ〜!!」
「にゃあん!にゃん!にゃん!」
『離せ〜!アル、離せってば!』
 小さい小さいフワフワモコモコな猫をしっかりと抱いたアルフォンスは、放そうなんて全然まったくさっぱり思考から消えている。
 それならばと、エドワードが身動ぎしたり爪を立てたりしても、
「痛いなぁ〜イタズラしちゃダメだぞ〜」
と、兄ということも忘れているかのような言葉。
 思い余って、また人の姿に戻った。
 しかし、そこはまだアルフォンスの腕の中。
「兄さ〜ん!こっちの兄さんも可愛いっ!」
「ちょ、ちょっと待て、わあっ!」
 口付けと同時に服を剥かれ始めたエドワードには、抵抗する術もなく。
 もう二度と化けるものかと、固く決心するだけだった。


end
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