夜想う曲―ノクターンを君に ―

□侵食(シンショク)
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 愛してる。
 彼を、愛してる。
 何度言っても言い足りないくらいだと、思うたびにアルフォンスは胸の奥が切なくなるのを感じていた。
 吸血鬼だとは言っても、彼の言うとおり、生活はいたって『普通』だった。
 一度だけ、ゴミ箱に枯れた薔薇の花が捨ててあったのを見たことがある。
 そういえばヴァンパイアは薔薇の生気を吸うんだっけと思ったくらいで、人がコンビニでサラダを買って食べるのと同じような些細なことだ。
 エドワードは相変わらず、アルフォンスに吸血行為を求めてこない。
 どうやらキスによってアルフォンスの体液を摂取しているらしく、もう数えられない彼の魅惑的な唇は味わっているのに。
「もしかして、僕の血って不味そう?」
 それだったらショックかもしれない。
 血液が美味しいか不味いかなんて、考えたこともなかったけれど、否定できない可能性が頭に過った。
 吸血鬼だったら遠慮なく飲んでくれてもいいのに、と、誰にも相談できない事で悩んでいた。
「ね、キスしてもいい?」
 アルフォンスがそう言うと、エドワードはすんなり唇を開いて応じてくれる。
 舌を深く絡め合いながら、エドワードの長い金糸のような髪をすくのがアルフォンスのお気に入りだった。
 髪を指で玩びながらのキスは、エドワードも気持ちいいらしく、うっとりとした顔を惜し気もなく見せてくれる。
 しかし、髪から背中を撫で、服の中にしのばせようとすると、グイッと身を引かれてしまうのが常だった。
「…ダメ、ですか?」
「…ごめん」
 濡れた唇をキュッと噛む姿を見てるのが嫌なので、いつもそこまでで引くことにしている。
 焦ることはないと思う。
 でも、欲しいと思う気持ちは日に日に強くなっていく。
 キスをしてるだけで、体の芯が熱くなってしまうことが、何度もあった。
 服越しにだったが、わざと熱く膨らんだ股間をエドワードに押し付けてみたこともある。
 しかし、彼は悲しそうな顔をするばかりで、「ごめんな…」と辛そうに言われてしまうと、アルフォンスは許してしまう以外になかった。
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