今日の兄さん(2011年)
□12月16日
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「♪ジングルベールジングルベール♪すっずっがー鳴る〜♪」
先日買ったオーナメントをご機嫌で飾っているエドワードを、アルフォンスは楽しそうに眺めていた。
今年もプレゼントしたお菓子のブーツは、なぜか同じ物が2つある。エドワードが、
「ほ、ホラ!おまえの分だって必要だろ!?」
アルフォンスはまったく欲しくなかったが、エドワードのあまりに必死に言うので、しかもオソロイの物がいいというので、2つ並べて置いてある。時折こっそりエドワードが、中身を出して履いているのは見なかったことにしてあげている。めちゃくちゃ可愛かったけれど、言うと二度とやらなくなりそうだったから、楽しみを奪っちゃ可哀相だ。
「♪ジングルベールジングルベール♪すっずっがー鳴る〜♪」
安いプラスチックとビニールで出来ているツリーだったが、兄にとっては宝物らしく、大事に扱っている。
「♪ジングルベールジングルベール♪すっずっがー鳴る〜♪」
楽しく歌いながら飾り付けているのを、アルフォンスもほっこりした気分で見ていた。
「……♪ジングルベールジングルベール♪すっずっがー鳴る〜♪」
ふと、何か気づいた。
「兄さん…」
「ん〜?」
「歌、そこしか知らないの?」
ビクッとして動きが止まるエドワード。歌も「♪ジングル…」で止まってしまった。
「ご、ごめん!いいんだよ!別に、たいしたことじゃないよね!」
慌て謝ってみたものの、エドワードの顔は泣きそうだった。
「兄さ…」
「♪真っ赤なおっはっなっの〜トナカイさっんっは〜♪ふふ〜ふふっんっふっふっ〜♪」
再び元気に歌い出したエドワードのクリスマスソングは、見事にハミングが9割だった。
end