青と金のキセキ

□青と金のキセキ10
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 軍に届けられる郵便物は、基本的に小包なら中身を調べられるが、封書は調べが甘い。特に、エドワードたち医務室の住人宛封書ともなると、軍の中でも異種的な上に専門用語が豊富とあって、さらに甘くなる。下手をすると、差出人不明でも開封することなく通ってしまう。それがなんとなく慣習になってたし、今まではそれでも何も問題無かった。
「まぁた来てる…」
 エドワードは、見ていた手紙らしきものを、ポイッと机に投げ出した。
「あら、ラブレターですか?」
 そうは言っても、トリアは、エドワードが他人の気持ちがこもった手紙を粗末に扱ったりしないことがわかっていた。クスクス笑いながら、明らかにからかいの口調だ。
「うん、まーね。熱烈なラブレター」
 読んでみろと、目で示した。
 他人宛ての手紙を読むのは、なんとなく気がひけたが、本人が読めと言ってるのだし。そう、トリアが手に取り読んでいるとピラウまで覗き込むが、エドワードが止めないので放っておく。
 その手紙は、「医者辞めろ」「おまえのことを考えると、今でも夜も眠れない」「医者になったことを、きっと後悔させてやる」などの強烈なラブレター、別名脅迫状だった。
 そして最後の捨て台詞には…
「「腕を磨いて待ってろ!」」
「そうそう。なんか応援のファンレターみたいだよな」
「先生、これって…」
 二人とも、怖がっている素振りがこれっぽっちもないのはさすがだ。
「ともかくオレ、脅迫状も書き方によってはラブレターやファンレターみたくなるって知った」
「どうするの?先生、味方も多いけど、何気に敵も多いよね」
「オレ、モテモテだからさー」
 口では呑気なことを言ってるが、エドワードが心底腹を立ててるのは目を見ればわかる程度に、看護師二人は毎日エドワードを見ている。
「とりあえず、無能に相談してくる」
 マスタング少将に相談したら、もれなく側近で補佐官の弟が怒りの破壊神になりかねないのだが、そこのところを知ってて言ってるのだろうか。
「どうせオレが隠してたって、アルは気付いちゃうから。あいつ、勘がいいからさ。それよかそろそろ、直接言っておいたほうが被害が少ないと思う」
 そんなもんなのか。
「ともかく、これも一緒に報告してくる。面倒くさいけど」
 トリアから受け取った手紙を再び封筒に入れて、立ち上がった。上から下まで黒でコーディネートされた服装に白衣というシンプルな出で立ちだが、比類無き類い稀な金髪が加わると何故かものすごく人目を引くという美貌の持ち主は、いかにもダルそうに足を引き摺りながら医務室を出ていった。
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