「オサムちゃん、あたし欲しいものがあるの」
 ベンチにだらけた格好で座っていたオサムちゃんの前に立って、じっと見下ろした。
 すると、オサムちゃんはなんや、とにこやかに笑った。
「何が欲しいん? 新しいマネージャー? 洗濯機? 乾燥機? 大型冷蔵庫?」
「…所帯染みてる答えだね…」
 半眼になってしまったあたしを見て、オサムちゃんはベンチに座り直した。
「なんや、違うんか。マネージャーやったら欲しいモノばっかやろ」
「そりゃ、洗濯機も乾燥機も魅力的だけどね」
 あたしが欲しいのはそういうものじゃない。
 唇を尖らせたら、オサムちゃんはふと表情を緩ませて、言うてみ? とやわらかく囁いた。
「オサムちゃんがやれるモンやったらなんでもやるで? あ、もしかしてコケ…」
「コケシもいらないの!」
 それじゃあ何が欲しいのかと言うみたいに、オサムちゃんがあたしを促した。
「あたしは…」


 あなたからアイが欲しいんです。


(Iでも愛でもどっちでもいいよ)
(どっちにしても、教育委員会にバレたらクビやな)
(大丈夫、16になったら結婚できるから)
(ほんなら、16まで待っとって)
(なにそれどーいう意味…!!)










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