dream

□end.2
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矢野さんが構えたのは



やや外角寄りの



ストレート




セットポジションに入る



緊張する


でも、




ここは抑えないと…











―やられた―










頭によぎったのは、その言葉だけ。




矢野さんが構えた所より、ほんの少し内側に入ってしまった。



つまりは、ど真ん中。



ウッズはみのがさない。



打たれた瞬間にわかった。大きな当たりは、きれいな放物線を描いて、阪神ファンの悲鳴のなかへ消えた。





完璧にとらえられた。





野手みんなが、呆然とした



9回表、2アウト
ボールカウント2−3


ランナーは、3塁



こんなピンチは、何度も乗り切ってきた



ここで、



このタイミングで、



藤川球児が試合を決定づける2ランホームランを打たれるなんて



誰が想像しただろう。





甘くない




そういうことだ。



9回裏で決めるつもりで、あるいは延長へ入るつもりで



マウンドに立った





最悪引き分けでもいい



0−0でいいのなら、




俺が抑え続ければいい






そういう思いで立ったマウンド





失敗は、許されない



俺に与えられる状況は、そんなのだ。



だから、慣れてる


大丈夫、



大丈夫だ…











野球はわからない。




1回から大量得点で突き放したり、離されたり



点の取り合いになったり



3イニング余分にやっても、試合が動かない時もある



3連戦とも、サヨナラ勝ちしたカードもあった


9回裏の大逆転勝利もあった



ただ、



今日は、違った



そんなの、違うことのほうが多いに決まってるのに



よりによって、今日だ。




【球児でうたれたら、しょうがない】




でも、今日はしょうがなくなんかない。


なんとしても、


抑えなきゃいけなかった



負けるわけには、いかなかったのに






最後に、監督を胴上げした




俺を、ここまでのストッパーにそだててくれた監督



ただ申し訳なくて謝ったら



逆に励まされた



だから涙がとまらなくて、号泣した



もう、これで岡田監督を胴上げすることはできないけど




来年、またストッパーとしてマウンドに立つことを許されるなら



俺は立ちたい




そう思えてるうちは



まだまだ成長できると思ってるから








終わった、だけど


(あの快感は、何にも変えられないから)



→あとがき
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