連載小説・T

□快楽【七ノ刻】
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上座敷の前まで来ると、千歳がいるであろう和室までもうすぐ。


ここで僕達三人はよく一緒に遊ぶから、きっと千歳は今、この部屋にいる。




僕が襖に手をかけ、妹と対面しようとしたら、



「樹月。ちょっと待って」

「え?―――っん!?むっ……っ!!」




不意打ちとは、まさにこの事。


再び訪れた睦月との接吻。


いきなりすぎてとても驚いたけど、僕の手は、腕は、睦月を抱き締めていた。



先程とは打って変わった荒々しい口づけに頭に血が登る。


僕はどうする事も出来ず、びりびりするこの衝動に身を任せた。




「いきなり、ごめん」

「う、ううん」




僕の呼吸が加速する。


心臓が鐘のように鳴りやまず、こう言っている。




「もう一度してほしい」と。






睦月の呼吸はどうなっているの?

睦月の心臓はどう鳴いているの?


どう、言っているの?




もし僕と同じなら、僕は襖を開けられない。

千歳には会えない。



本当に酷い兄で、酷い長男だ。





「樹月、俺、ふざけてる訳じゃないよ」

「うん」




僕だって、ふざけて睦月と接吻したりしない!!!!


ふざけて睦月を抱き締めたりしない!!!!




「本気、なんだ」

「僕も、本気だよ」




今度は僕が睦月の手を口づける。




「睦月。僕の事も信じて」




だから僕に接吻した事を謝ったりしないで。

責めたりしないで。

悔やんだりしないで。


そんな気持ちを残さないで。

留まらさないで。



睦月の手から、みんなみんな僕が吸収してあげる。

僕が飲み込んであげる。




そしたら睦月は、とても、とても綺麗な顔で、綺麗すぎる顔で、こう言った。




「うん。信じる」





睦月が僕の肩に軽く頭を乗せる。

僕は睦月を抱き締め、睦月に気づかれないように髪を数本指に絡め取り、口内で愛撫した。











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