連載小説・T
□夢想【八ノ刻】
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宮司様が訪ねてきたという事は、僕と睦月が〔立花家〕と〔桐生家〕とで離れ離れになって生活し、祭りの日が着々と近づいているのだという前触れ…………。
だから、今日の柱時計の振り子はいつもより大きく揺れていたのかな?
お気に入りの書物の続きは気になるのに、この続きは気にならない。続きを進めたくはない。
「樹月も玄関に行きなさい。宮司様をお待たせしては悪いでしょう」
「……はい……」
母は、和室の中には一度も足を踏み入れなかった。
今の僕のように、睦月が「儀式なんてしたくない!!!!」と、がむしゃらになって抵抗してくれたら、いっそ清々しい。
乱れた髪も、はだけた着物も、緩んだ帯も、睦月のせいだと思ったら、睦月にされた事なのだと思ったら、たいして気にならなかった。
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