SONG NOVEL

□ラック
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ここはネオンの輝く
薄汚いスラム街


辺りには
倒れている奴や
ストリートチルドレンだとかが
今日を生き抜くために
知恵をはたらかす


そして俺もその一人


小さい頃
まだ物心がつきたてで
この世の中のことなんか
知るはずもないような時期…
俺はもうこの世の実態を
知っていた



親は…目の前で
殺された…


その時全てを悟った


所詮この世は弱肉強食で


力が全てだということを



それから独り
生き残るための技術を
研いた



「俺は誰にもたよらねぇ…」



来る日も来る日も
喧嘩に明け暮れる毎日
その手は次第に
血に染まっていった



悲しすぎるほどの
少年の心の絶叫……



今日の相手は弱すぎた



顔面血だらけで倒れてる



「ご愁傷様…相手は考えな」

「俺にはもうこんなもの必要ねぇ…」



そう言って
ポケットにあった
最後のマネーを
投げつける




もうこんな世界見飽きた
うんざりだ




ふと空を見上げる


月は愚か星さえも見えない



夜空の光に勝った
街のネオンは
やがて俺に幻覚を見せる



誰かが俺を狙う
その姿は朧げだけれど…



片っ端から殴り倒す
けれども殴っても殴っても
正体はわからず



「俺が殴りたいのは誰なんだ!!!」



と言い
一筋の涙を零した

「涙なんてとっくに枯れ果てたと思ってたのに…」




強がっていた
子供の頃からずっと…
喧嘩だって
研いたし
生き抜くための知恵もつけた


でもそれだけじゃ
このスラムでは、生きていけそうにもない



俺は本当はとても弱くて
いつも不安に
押し潰されそうになる



「誰か俺を助けてくれ…」




こんなとこ逃げ出してやる



俺はこの世界から逃げ出すためひたすら出口を目指し走った




金とか欲望だとかが
入り乱れた
ずるい現代の悪臭にも
たえてきた



でも





もう、無理





もう、疲れた






俺は走る


ただひたすら
前だけを見て




けれども
走っても走っても



そこは見慣れた暗いスラムで




出口なんか何処にもない





「嘘…だろ?」






俺にはここ以外の世界で生きる資格はねぇって言ってんのかよ…




「ふざけんなッ!!!」




俺が何か悪いことでもしたか?




「なんでだよ!!!…なんで…畜生…」





俺は俺に押し付けられた世界の酷さに
ただネジを無くしたガラクタみたいに、その場で音をたてて崩れ落ちた…

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