SONG NOVEL

□敵はどこだ?
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ここは戦場。


僕の目の前には拳銃が。


『これを使って殺しなさい。』


-何を?


『狙うところは相手の左胸、若しくは眉間。』


-何故僕が?




僕の目の前にある拳銃は、ただただ冷たく光るばかり。

何も語ってはくれなかった。



僕の目の前にあるのはいつしか拳銃から人間にかわっていた。


そしてその拳銃は僕の手の中へ。



僕の目の前にいる人間。


僕と同じ様に拳銃をかたく握りしめ、僕を真っすぐ見つめる。


僕は顔を向けることができなかった。


その人間の瞳の奥には僕じゃなく、愛しい人の姿があったから。


『私は帰らなくてはならない…どうかお願いだ!!!』


そんなこと言われても困る。


ここは戦場で


残るものは


生と死。




戦場に情なんかあったもんじゃねぇ…



愛と平和を…



無常なもんだな。




『私は帰らなければならないんだー!!!』



すごい形相で走ってくる。


この人間は自分の運命を知っていたんだろう…



走ってくるその瞳には涙が…


僕の銃口から放たれた弾は、彼の心臓を貫通した。


返り血が僕に襲いかかる。

『ごめんな…帰れなくて…』


その手には愛しき人の写真が紅に染まっていた。



もうその瞳には愛しき人の姿はなかった。





もういい。


もう止めよう。


情に振り回されるのは疲れた。



こんな心など捨ててしまおう。



そうすればこんなにも苦しまずすむ。




僕の銃口は探した。


撃つべき敵を。


僕以外は皆敵だ。


敵味方カンケーない。


こんな世界…死んでしまえ。





撃ちまくった。


僕のまわりは血にそまり、人は這いつくばる。


なぜ、人間はこんなにも弱い?


こんなちっぽけな鉄の塊で死んでしまうのか?



誰か僕を殺してみろよ…


殺してくれよ!!!




パンッ!!!




僕の左胸から温かい血が流れる。



はっ…ハハッ…ハハハ。


僕も終わり。



瞼を閉じた。


どこからか泣き声が聞こえる。


それは紛れも無い地球の泣き声。


-何故人間ハ欲ヲダス?


-何故人間ハ争ウ?



わかんねぇ…わかんねぇよ!!!


そんな事僕に聞かないでくれ。



そういえばあの時言ってた。



『君はこの国の正義になるんだ。』



人を殺すことが正義?



薄れゆく意識の中で聞こえる崩壊と争いの音。



正義はどこだ…

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