バレンタイン小説

年下×年上











Like a chocolate…











スザクは今、自分の恋人であるルルーシュの部屋にいた。テレビをつけてボーっとそれを見る。
「まだかなぁ…」
もう時計は夜の10時を回っていた。9時には帰れると言ったのになぁ…と呟き持っていたクッションを強く抱きしめる。
明日は休みで久しぶりにゆっくり一緒に入れるんだから我慢しようと思い溜息を吐いた。自分は学生で、ルルーシュはもう社会人なのだから仕方がない。時間が合わなくたって。
「う〜」
まだかなぁ、とクッションに顔を埋める。その時にがちゃっという扉を開ける音が聞こえてスザクはクッションから顔を放し、顔に笑みを浮かべた。
「ただいま、スザク。悪かったな。…遅くなってしまった」
「ううん、全然いいよ。ルルーシュ、疲れてるでしょ?僕が何か作ってあげるよ」
「いいのか?」
「うん。ちょっと待っててね」
疲れたような表情をしているルルーシュを一回抱きしめてスザクはキッチンに向かう。キッチンで料理を作っているとルルーシュの携帯の着信音が鳴って誰かと話しているようだった。
「誰だろう…」
気にはなったがもうすぐ作り終るからその時に聞こうと思って頭を振る。
「君だけの甘いものに〜♪」
鼻歌を歌いながら作って作ったものを皿にのせて行く。上出来だな、と一人笑みを浮かべてリビングに行くとルルーシュがパソコンを開いていた。
「ルルーシュ、あの、料理出来たよ」
「あ、あぁ…ありがとう。スザク。すぐ終わるからちょっとだけ待っていてくれ」
「う、うん」
ルルーシュがパソコンから目を離さないで言う。スザクはルルーシュの邪魔にならない様にテーブルに料理の乗った皿を置き、ルルーシュの隣に座った。邪魔だろうか、と思ったが静かにするからと理由をつけてルルーシュの横顔をそっと覗き見る。
真剣にパソコンに向かっている姿は知らない人みたいだった。そのことに寂しさを感じてルルーシュの肩に頭を乗せようとした、が邪魔をしては駄目だと堪える。こうしているのを見ると本当にルルーシュは自分より大人なんだと思う。そう自覚して、まるで離れていってしまうんじゃないかという錯覚も起こす。それを振り払うようにスザクはまた首を振った。
「スザク、すまなかったな」
終わったのかルルーシュがパソコンを閉じてスザクを見る。
「全然、いいよ」
そう言って立ち上がりルルーシュの向かい側に行こうとするとルルーシュに頭を撫でられた。そしてにっこりと微笑まれて、それで今までの不安な気持ちが吹っ飛んでしまうのだから大概自分も単純だなとスザクは笑った。



「スザク、すまない。少しだけだから…」
スザクの作ったご飯を食べてお風呂に入って、さぁいよいよ恋人の時間とスザクが思ったがルルーシュに申し訳なさそうに眉を下げて言われた。
「でも…さっきだって仕事やってたじゃないか」
「本当にすぐ終わる。だから、スザク」
「だって…、」
「終わったら、好きなことさせてやる。だからごめんな。スザク」
ちゅっと頬にキスをされてはぁ、と溜息を吐く。久しぶりに会えるからって浮かれていた自分が馬鹿みたいだと俯いた。
「何でもさせてくれんの?」
「あぁ、何でもしてやる」
「じゃあ、早く終わらせてね」
そう言うとルルーシュがすまなそうな顔をしてパソコンを開いた。自分はその隣に座る。
今愛の言葉を囁いても意味がないのだろう。自分の気持ちが虚しくなるだけだ。そう思って悲しいな、と息を吐いた。
昔付き合った子との恋はどうだっただろう。そう思ってハッとする。恋らしい恋なんてしてこなかったじゃないか。夢中になったのは、ルルーシュが初めてで。あぁ、だからか。だからこんなにほろ苦い。
甘い恋なんてしなくたっていいさ。そう言って笑ってたのは自分じゃないか。なのにこんなにそれを求めて…。
「スザク、」
ルルーシュに名を呼ばれて振り向くと唇にキスをされた。
「待たせてごめんな」
「もう、いいの?」
「あぁ」
その言葉にスザクは笑みを浮かべて今度は自分からキスをする。深くなる口付けの中、そうか、とおもった。
ルルーシュは、甘い恋を笑ったりなんてしない。多分彼は求めている。
そう思うと愛しくて堪らなくなって片手はルルーシュの腰を抱きしめながらもう片方の手はルルーシュの髪に絡ませてルルーシュとキスをする。とても甘くて止められない。ルルーシュも、そうなのだろうか。そうだといいな、と蕩けそうな口付けの中、スザクは思った。


Like a chocolate…
キミだけの僕になろう








手を握り締めるとルルーシュはギュッと握り返してくれて。スザクはただその事だけに安心して微笑んだ。よそ見をしながら歩いているのに、繋いでいる手は当たり前のように永遠だと思いこんで。
「寒いな…」
マンションについてソファに座ってスザクが言い、ルルーシュを抱きしめた。そうするとルルーシュがスザクの頭に手を置いて髪を撫でてくれて。楽園のように心地がいい君にずっと甘えているのは自分なのだろう。ルルーシュが甘えてくることなど、ほぼ無いのだから。
だからねぇ、甘えてよ。



「スザク、すまない。仕事が入ってしまったんだ…」
「何で、…僕ずっと楽しみにしてたんだよ?」
「だが…終わらせなければいけないやつなんだ。大事な取引先との…」
「最近全然会えなかったじゃないか?だから僕本当にこの日を楽しみにしてたんだ」
「昨日泊まったじゃないか。すぐに帰ってくるから」
「昨日泊まった?そうだね。でも君が仕事をしていたせいでそんなに構えなかったけどね」
ルルーシュが悲しそうに瞳を伏せた。違う。そういう顔をさせたいんじゃない。ルルーシュには笑っていて欲しくて。
「いいよ。別に。仕事が大変なんだもんね。…付き合っている意味がないみたいだ」
なのに自分から出てくる言葉はルルーシュが傷つく様な言葉ばかりだった。素直に寂しいとも言えない。
「スザク、本当にごめん」
「別に。早く行ったらいいだろう?」
「ごめん、スザク」
そう言ってルルーシュが出て行く。扉が閉まる音を聞いてスザクは崩れる様にその場に座った。
「ルルーシュ…」
寂しいよ。折角楽しみにしてたのに。ルルーシュのことを思うだけで自分は、


Like a chocolate…
陽だまりでとけるのに














肩を叩かれてぼんやりと目を開ける。光が眩しくて手でそれを遮ろうとしたがルルーシュの声が聞こえて閉じようとしていた目を開けた。
「すまない。スザク…待たせてしまったな」
「…別に」
寝ていてしまったのかと頭を振ってソファに寄り掛かった。ルルーシュもスザクの隣に座り、息を吐いている。ちらっと横顔を覗き見てみると本当に疲れたような顔をしていた。今、愛を語っても意味がないだろうな、とスザクも溜息を吐く。寂しかったと正直に言ってみようか。
そう思いルルーシュの方を見ようとしたが肩にルルーシュの頭が乗ってきてそれは叶わなかった。
「…疲れた」
ぽつりと言われた言葉に少し嬉しくなるのを感じた。スザクはルルーシュの髪を撫でる。
「大丈夫?」
「お前と、折角会えたのに…」
ぎゅっと服を掴まれて頬が緩む。あぁ、ルルーシュも同じ気持ちだった。
「ごめんな、スザク…」
「…いいよ」
微笑んでルルーシュの額にキスをする。ルルーシュが恥ずかしそうに自分の肩に頭を擦りつけて来てスザクは思わず声を出して笑ってしまった。
「ちょっと、渡したいものがある」
そう言われてルルーシュがソファから立ち上がる。スザクはクッションを抱いてルルーシュも自分と一緒に入れなくて寂しかったと言ったことを思い出しまた微笑んだ。
「スザク、ほらこれ」
ルルーシュがスザクに差し出したものは黒と茶色で綺麗にラッピングされたものだった。なんだろう、と思ったが今日が何の日か思い出しルルーシュを見る。
「バレンタインチョコ」
「あ、ありがとう!ルルーシュ」
嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。それを受け取り立っているルルーシュの腰に抱きつく。
ルルーシュに腰にまわした腕を外されてどうしたのかと思い顔をあげるとルルーシュがしゃがみ込み目線が合う。そしてそのままキスをされた。そしてにっこりと笑われてスザクも笑いかえす。
「愛してる」
だから、君だけの甘いものになろう。そう思い、優しい口付けを繰り返す。ルルーシュもそれに答えてくれて。
ルルーシュが自分といる時に安らぐ思いを感じていてくれればいい。そんな思いをルルーシュに与えたいと本当に思っている。だって自分はその思いを与えてもらっているから。深い、愛情を。
だけど不安になる。ルルーシュは自分より全然落ち着いていて、そして余り頼ってくれないから。でも、ルルーシュが心の拠り所を必要とした時に、自分を思い出してほしい。そしていつかはルルーシュが自分を頼ってくれるようになればいい。
「スザク…」
ギュッと抱きしめられて、あぁ、それは違うかと頬を緩めた。
ルルーシュはちゃんと、頼ってくれてるじゃないか。表に出さないだけで、自分を思ってくれている。そしてたまに出すこの全身で表わす甘えっぷりが堪らない。
「ルルーシュ、チョコ開けてもいい?」
「良いぞ」
ルルーシュが自分の隣に移動してスザクはラッピングを綺麗にはがし中身を見る。凄く美味しそうなチョコレート。
「美味しそう」
そう言って一つ手に取り食べる。甘すぎもせず、自分の一番好きな味。
「とても美味しいよ。僕の好きな味だ。よく探したね」
そう言うとルルーシュが嬉しそうに笑って。それを見て自分も嬉しくて微笑んだ。
おいしいな、と思いまた手を伸ばす。さっきのとは違った味。だけどこれも好きなものだった。少しお酒の入ったもの。
「本当においしいよ。どこで買ったの?」
「…俺が、作ったんだが」
伸ばした腕を止めルルーシュを見る。恥ずかしそうに顔を赤らめて。あぁ、道理で美味しいはずだ。
「ありがとう!ルルーシュ」
満面の笑みを浮かべてそして一つとり、ルルーシュの口内に入れた。そして不思議そうな顔をしているルルーシュに口づけて口内にある少し解けたチョコを自分の方に移す。
「んぅ!?」
「美味し…」
口を離してまた微笑む。あぁ、今のは甘い。蕩ける様に甘いんだ。


Like a chocolate…
甘いチョコになって










「ルルーシュ、愛してるよ」
「恥ずかし、いことを…そ、なに言うな」
繋がったままそう言ってキスを落とすとそう言われて苦笑する。
「何度も言うよ」
そう、何度だって。
「愛してる」
何度言っても足りないくらいなのだから。だから何度も言うんだ。愛してるって。
「愛してるんだ」
そう言って抱きしめる。甘い自分でルルーシュを包み込んで微笑むんだ。
「愛してる」



Like a chocolate…
閉じ込めてはなさない




















ビターショコラ
   Like a chocolate…


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