転生ネタ














目が覚めて隣にいたはずの温もりがないことに気がついた。体を起こして周りを見渡すが探している人影は見えない。スザクは立ち上がり、シャツを羽織った。
「ルルーシュ…」
どこにいるのだろう。後少しの一緒にいられる時間。少しでも一緒にいたい。あてもなく彷徨うと、庭園に人影が見えた。それに近づいていく。ルルーシュはまだスザクの存在に気づいていなかった。月の薄明かりに照らされたルルーシュは酷く幻想的だった。真っ直ぐに月を見つめるその姿。
皆が今、ルルーシュのことを悪逆皇帝と言っている。計画通りのはずなのに、とても辛い。だが当の本人のルルーシュは迷いがなかった。全てを見据え、その先にある明日を見ている。そこに自分がいないことになど嘆きもしない。あぁ、本当に君は優しい。
「ルルーシュ」
「スザク。どうしたんだ?」
「目が覚めたら君がいなかったから。探してたんだ」
「そうか。すまない」
「全然」
隣に座り、ルルーシュを見て微笑む。愛しい、愛しい君。温もりも何もかも失いたくないんだ。
ルルーシュの肩に甘えるようにスザクは首を預けた。ルルーシュは仕方ないなと言うように苦笑しただけ。
「昔も君とこうしたことがあったね」
「あったな」
「まだ凄い純粋だったころ。夢も何もかも全てが叶えられると信じていたころ」
スザクにとってはそうだったかもしれないがルルーシュにとっては違かったのかもしれない。あの頃からルルーシュは知っていたんだもんね。どれだけこの世界に偽りがあるのかを。
でも君は何故自分がそこにいるのか、何をするのか、その時も迷っていなかった。君はナナリーを守ることを第一にしていた。そして振り返りはしない。まだ子供なのに、君は自分の立場を理解してした。
そんな君に、僕は初めて恋をしたんだ。
あの頃の自分は、何かに限界があるとか、絶望があるなんてこと考えもしなかったんだ。そして初めての恋をして。その気持ちだけで強くなれる気がした。ルルーシュを守りたかったんだ。
あの頃の気持ちは今でも続いている。本当に今でもただ、愛していて。だから君から与えられる愛情がとても嬉しいんだ。
すれ違うことが多かったけど、愛してのはルルーシュだけだ。ルルーシュは嘘だと笑うだろう。だけど、それは本当で。狂おしいほど昔から君を求めている。
「ルルーシュ、愛してるよ」
「俺もだよ。スザク」
微笑むルルーシュに口付けをする。触れるだけの接吻。照れたように笑う君が、本当に愛しい。
きっと、この気持ちは永遠に続くのだろう。



例え、君がいなくなったとしても。





早くこの手を離せ。そうすれば、全てが変わる。そう思ってルルーシュは少し微笑んだ。目の前は赤く染まる。体の感覚はほとんどなくなり、聞こえてくる声もない。
もう一緒の運命など歩めない。愛を囁き合うこともなければ、共に笑い合うこともない。もしこのことを悔やむことがあったとしても、振り向かないでほしい。振り向くことがあったとしても、また前を向いて欲しい。それがスザクの歩む道なのだから。
目の前が赤く染まる。あぁ、なにも見えない。この赤い闇の中、スザクが自分の名前を呼んだとしても返事を返してやることもできない。名前をいくら呼ばれても、待つこともできないんだ。
それはとても寂しいことだけど、でも後悔はない。
色々な傷があった。そもそもスザクと戦うということが辛かった。初めての友達。そして初めて恋をした相手。とても愛しかった。ナナリーもそうだったが、それとは違う質の愛情。
辛いこともたくさんあったが、自分の中で色鮮やかに輝いている思い出もたくさんある。本当にそれは色褪せることなくずっと光り続けるのだろう。
でもその思い出と引き換えてでも、君への愛を望む。そして愛する君に、愛する妹を守ることを頼もう。
だからお願いだ。振り向かないで、前を見てくれ。
愛しているよ。




ルルーシュがいなくなって気づいたことは本当に自分は彼を愛していたということ。ルルーシュはもういないのにスザクは求めてしまう。
ルルーシュと過ごした日々は美しく、鮮明に記憶に残っている。だけど、それと引き換えてでもルルーシュに会えるというのなら迷わずそれを受け渡そう。また悲劇が待っているのだとしても、ルルーシュがいてくれたらなんだっていい。そう言いたい。だが、ルルーシュがくれた世界の明日。それを断ち切らないためにも、そしてルルーシュが望んだ優しい世界にする為にも頑張って見せよう。正義という名の仮面を被り続けようじゃないか。
愛の気持ちは無敵だと信じたあの頃に戻れるのなら、どれだけ幸せだろう。でも本当にそうなのかもしれない。
口づけて、抱き締めて、離したくない。手を伸ばし名前を呼ぶんだ。そうすればルルーシュは微笑み、愛してると言ってくれた。
「ルルーシュ、愛してるよ」
もう幾年が過ぎただろう。君がいなくなってから。なのにこんなに求め続ける。きっと、君しか求められない。

最初の恋が、最後の恋なんてとても幸せなことだよね。






願わくば、生まれ変わっても君を愛したい。



















急いで車の通りが少ない道路を走る。体力に自信はあるが少しこの急な坂道は正直きつい。でも、ここを通れば近道なのだ。自分の想い人の家に。
その家の前について息を整える。急いできたなんてこと恥ずかしくてとても言えない。まだ思いは伝えていないのだ。いつ言おうか迷ってこの様。恥ずかしいにも程がある。
息が落ち着いたところでチャイムを押す。足音が聞こえてドアが開いた。
「スザクさん、いらっしゃい」
「お邪魔します。ナナリー」
にこにこと微笑む彼女にスザクも微笑み返した。中に入ると、ルルーシュとロロがキッチンのほうから来てくれる。愛しいその姿を見て、胸が高鳴った。
「いらっしゃい。スザク」
「お邪魔します」
「少し待っていてくれ。お茶を淹れるから」
「僕も手伝うよ。兄さん」
「ありがとう。ロロ」
ルルーシュの後を楽しそうにロロが付いていく。その前にスザクを睨むことも忘れない。甘い香りがするから何かお菓子でも作っていてくれたのだろうか。
「お兄様、とても機嫌がいいんですよ」
「そうなの?」
「えぇ、スザクさんが来て下さるからだと思います」
ナナリーはそう言っていたずらをするように笑う。
「スザクさんにだけ教えます。お兄様、スザクさんのことが大好きなんです」
ふふっと、笑う彼女の言葉にスザクの顔は徐々に赤くなっていく。嬉しすぎる言葉を言われ、スザクも笑った。
「じゃあ、今日言ってみようかな」
ルルーシュに、愛してるって。




ルルーシュと思いが通じあっていたことを知ってスザクは歓喜し、ルルーシュを抱きしめた。腕の中にある温もり。とても愛しい。強く抱いて口付けをおとす。
もう、はなさない。そう言うとルルーシュもも微笑んで手を伸ばしてスザクの名を呼ぶ。
なんて、幸せなんだろう。



君に巡り合って最高の愛を知った。きっとこれが最初で最後の恋。


だって君は僕のカルマ。永遠に恋しいんだ。





















 キミハカルマ         

 何度生まれ死んでも、君に巡り合う

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