ルルーシュ誕生記念
















君を愛している


















「ルルーシュ、誕生日おめでとう!!」
スザクに笑顔でそう言われてルルーシュは微笑んだ。「ありがとう」と言うと先程よりスザクは笑みを深くして笑う。
生徒会室で皆に祝ってもらった後だった。スザクを自分の部屋に呼び今は2人だけで落ち着いた時を過ごしている。
久しぶりの穏やかさと言っても過言ではなかった。スザクは軍人であり、まず学校に来る日が少ない。今日は自分の誕生日だからと無理やり開けてくれたらしい。スザクから直接聞いたわけではないがリヴァルがそう言っていた。
スザクが、軍人が忙しい理由は分かっている。ゼロがいるからだ。自分がやっている、ゼロが。
ルルーシュがゼロとしての活動をすればするほどスザクが危険に曝される回数も多くなるのは分かっている。だけど、自分にも信念がある。貫き通し、そして叶えたい夢がある。
例え、スザクの敵になったとしても。
「ルルーシュ?どうしたの?」
「ん?・・・あぁ、すまない。ボーっとしてしまったな」
「全然いいんだよ。なんか疲れてる?」
「疲れてない」
「そう。それならいいんだけど」
スザクはそう言い笑った。スザクの笑みを見るとルルーシュも胸の中に温かいものが湧き上がるのを感じる。きっと、愛しいという感情なのだろう。
滅多に人を信じようとしない自分が心を許せる数少ない人。自分の親友。とても、大事な人なんだ。だから守りたく、ナナリーと共に笑っていて欲しかった。
何万人、何億人、星の数ほどいる人の中でスザクを好きになった。出会いは偶然だったとも言える。だが、偶然ではなく必然だったのかもしれない。
「ルルーシュ、僕のプレゼント・・・気に入ってくれた?」
「あぁ、もちろんだ。凄く嬉しい」
「本当に?」
「本当に」
不安そうに聞いてきてルルーシュの答えを聞くととても嬉しそうに微笑む。深緑の瞳が細くなり優しげな笑みがその顔に浮かぶのがルルーシュはとても好きだった。
「何を心配しているんだよ。・・・スザクの選んでくれたものを喜ばないわけがないだろう?」
「・・・君、それ誰にでも言ってるわけじゃないよね」
「まさか」
「それならいいんだけど」
どこか不貞腐れたような顔になったのでそれに笑ってしまうとスザクもルルーシュにつられるように笑った。
幸せな時間だと思う。こんなにも穏やかな時間はとても幸せだと。普段、自分はスザクに憎まれているのに、とルルーシュは瞳を伏せた。
ゼロを憎んでいるということは自分を憎んでいることだ。それはとても苦しい。愛しい人に憎まれているということなのだから。
だけど、もし最初に愛は苦しみだと教えられていたとしても自分はスザクを選んだだろう。迷わずに、きっと。
「ルルーシュ」
「どうした?」
こつんと、肩にスザクの頭が乗せられる。その重みにほっとする。
「ん〜?だって君、今日なんかボーっとしてるから」
「・・・そうか?」
「うん」
「幸せ、過ぎてな。こんなに穏やかなのは久しぶりだから」
「はは、なにそれ」
「何なんだろうな」
スザクが自分の肩から頭をどかす。
「ルルーシュ」
名を呼ばれてスザクの方を向くと唇に柔らかいものが触れた。瞳を閉じると髪に指を絡まらせる感触がする。
「ルルーシュ、愛してるよ」
その言葉に自分は微笑むだけだった。照れくさいその言葉をどうしても言えなかったのだ。
『キミヲアイシテル』そんな一言が飾らずに言えたらどんなに楽なのだろう。そうすればスザクはきっと嬉しそうに笑ってくれる。だけどどうしても素直に言えないんだ。
「愛してる。これからも、ずっと」
そうなればいいな。そう思ってルルーシュは目を閉じた。























「ルルーシュ」
スザクは呟き、空を見た。仮面越しに見る空は澄み渡っていたがどこか現実味を帯びていない。
カシャン、と言う音を立てて仮面を外す。誰もいない、誰にも見られない場所。海の潮風が心地よかった。
「君を、愛してるよ」
微笑み視線を落とす。微笑むなんて行為、いつぶりだろう。顔の表情なんてもう余り変えることがないから。
ルルーシュも自分のことを愛してくれていた。その愛は惜しみなく注がれるもので自分はそれに耐えられなくなることがあった。自分は、その愛情を返せている自身がなかったから。
「君が僕を好きな理由がわからないんだ」
あんなに愛情を注いでくれるルルーシュだったけど、その理由がわからなかった。ルルーシュは自分のどこが好きだったんだろう。
「僕はね、全部だったよ」
その時はどこが、と聞かれてもよくわからなかった。だってルルーシュのことを憎むことさえあったんだから。
でも今ならはっきり言えるんだよ。君の、全てが好きだった。
「君はどこだったんだろうね」
自分のどこが好きだったのか、わからない。でもそんなものなのかな。ルルーシュって自分がルルーシュのどこが好きなのか分からなかっただろうし。
「ルルーシュ」
本当は、君を殺したくなんてなかった。それが言えず、君を殺すことが自分の役目だと言っていたことが自分の最大の嘘なのだろう。
「君を、憎んだことなんてなかったのかもね」
憎んでいると思っていた。だけど、憎み切れなかった。
嘘を吐いて君を泣かせた時、何もすることができなかった。自分はただ黙っているだけだったんだ。
「愛してるよ」
ルルーシュといた時、ありふれた日々が鮮やかに彩られた。ルルーシュといるだけで全てが色鮮やかでルルーシュがくれる愛に満ちていたんだ。
「忘れないよ」
この気持ちは絶対。ルルーシュを愛しているという気持ちは二度と。忘れない、忘れるわけがない。
「ルルーシュ」
君が死んでからもう何年が経っただろう。ルルーシュが死んだときにスザクも死んだ。だけど、この日だけはスザクに戻るんだ。ゼロと言う仮面を被らないただの人間に。
「誕生日おめでとう」
手にしていた花を海に向かって投げる。ひらひらと舞いながら花は海に落ちる。
『ありがとう』
そう言ってルルーシュは嬉しそうに紫の瞳を細めて笑っていた。その笑顔が、瞼に焼き付いている。
「愛してる」
今日だけは素直になっていい。だって自分はゼロではないのだから。ただのスザク。
ルルーシュの、恋人になれる。今日だけは。
「今日は、素晴らしい日だ」
ルルーシュが生まれた日。そう思うだけで、特別に思える。
そう思ってスザクは仮面をつけ、海に背を向けた。












何気ない今日と云う日が ボクらの記念日






















Anniversary
    キミヲアイシテル

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