長編小説

□かなしい揺り篭
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「私は絶対、貴方を幸せにするよ。絶対だ。約束」
「本当かな?」
「本当だ。だから、これ」
「何だ?」
「婚約の誓い。…指輪じゃないけど」
そう言って幼い少年が差し出すのは透き通るような水色の石がついたネックレス。少女はそれを受取って、掌の上に載せ見つめる。
「私と、お揃い。これに誓って、絶対君を守るから」
少年の首には同じタイプの石が紫色のもの。少女は微笑んだ。
「嬉しい。…ありがとう」
そう言う少女に少年は嬉しそうに笑って。少女からネックレスを受け取り首にかけてやる。すると少女はまた笑い、少年に口付けた。
「好きだよ」
「私も、好きだ」
そう言って笑い合う。あぁ、なんて幸せなんだ。

絶対守ると、幸せにすると決めたんだ。だから誓った。そして願ったんだ。
ずっと一緒にいたいと。





















学校帰り。もう辺りは薄暗く、遅くなっちゃったなと溜息を吐いて走り出す。少しでも早く帰らなくちゃ。きっと、夕食も食べないで待っていてくれるから。
階段を駆け上がり家の扉を開く。
「お帰りなさい。坊ちゃん」
もう高1なんだからその呼び方は止めて欲しいと思うのだが昔からの癖からなのかなかなかそれは止めてくれない。
「ただいま」
そわそわとあたりを見回す。いつもなら玄関まで迎えに来てくれるのにおかしいなと思っていると枢木家に仕えている女中に苦笑された。
「ルルーシュ様なら今夕食を作っていらっしゃいます。…もうすぐ来るかと」
「あ、あぁ…そうなんだ」
今日の夕食はルルーシュが作ってくれているんだと微笑んで、台所に行こうとしたらパタパタという音が聞こえてルルーシュが来た。
「お帰りなさい、スザク」
礼儀正しく座り言おうとするルルーシュを別にいいよと立ち上がらせ微笑む。
「夕食、作ってくれたんだって?」
「あぁ、もうすぐできるから待っていてくれ」
ふふっと笑うルルーシュの髪を撫でて自分は着替えに行く。早く、夕飯食べたいななんて口元を緩めていると女中に笑われてしまった。



ルルーシュはスザクの婚約者だった。ブリタニアと日本の関係をよくするために結ばれた婚姻。でも、スザクにとってそれは不満じゃなかった。スザクはルルーシュのことを初めて見たときから好きだったし、今もそしてこれからも愛しているのだから。
初めてルルーシュが来たのはスザクとルルーシュ、共に10歳の頃だった。最初は戸惑いもしたが、徐々にそれもなくなりそして一緒に時を過ごすにつれて婚約しているという実感が湧くようになった。
「おいしかったよ。ルルーシュ」
「そうか、良かった」
食事を食べ終わり片づけて二人だけで過ごす時間。寝るのを共にしているというわけではない。ルルーシュも警戒するだろうし、そう言うことはルルーシュの承諾も得てからやりたかったから。無理強いはしたくない。
もちろんスザクは他の女を好きになったことはなかった。スザクの中ではルルーシュしかもう見えていないと言っても過言じゃない。
「ルルーシュ、明日一緒に出かけようよ」
「ん?でも疲れてるんじゃないのか?」
「大丈夫だよ」
「そうか。楽しみだな」
ふふふっと笑い合う。本当に愛しい。そう思う。
「ルルーシュ、いつもこれつけてるね」
髪を撫でていると毛がネックレスに絡まってしまってそれを取る。ルルーシュが痛くない様に。
「大事なものなんだ」
そう言ってルルーシュが愛しそうにそれを撫でる。自分の家に来るようになったときからずっとしているネックレス。水色の綺麗な石がついた。きっと妹にでももらったんだなとスザクは思っていた。それをはっきりと聞いたことはないが。
「じゃあ、そろそろ寝ようか。明日は早く起きて遠出しよう」
「あぁ、お休み。スザク」
「お休み」
そう言ってルルーシュに口付ける。赤くなるルルーシュの額にもう一回やってからルルーシュの部屋から出て行った。
初めてルルーシュとキスをしたのは15歳のスザクの誕生日だった。まだセックスはしていない。キスだけでも、これほどに幸せなのだから。
ルルーシュが婚約者でよかったと本当に思う。こんなに愛せる人が婚約者で、本当に良かった。
そう思ってスザクは微笑んだ。
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