長編小説

□鳥籠に布を被せる
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いつからだろう。こんな感情が芽生えたのは。










一緒に暮らすようになって1ヶ月。僕のルルーシュに対する気持ちに気付く気配もない。一緒の高校に入るときにルルーシュが言ってきた。一緒に暮らさないかと。二人で暮らせば色々と楽だろう、と。僕は親と仲が悪く、高校に入って離れることを望んでいたし、ルルーシュも母は死に、父とは疎遠状態だった。体の不自由な妹は養護施設に預けられ、ルルーシュはそのお金をためるために今まですんでいた家を売った。
「スザクとだったら一緒に暮らすのも楽しいだろうしな」
ルルーシュが僕に対し言ってきた言葉。ルルーシュは気付いていない。どれだけ僕が君の事を愛していているのかなど。ルルーシュは僕のことを親友だと思っているんだろう。だけど僕はそんな感情、昔から持ち合わせていなかった。僕にとってルルーシュは親友なんて生ぬるい感情じゃ例えられないほど愛しい人になっていたのだから。
昔からそうだった。だが、一緒に暮らすようになってから余計に酷くなってきた様な気がする。僕がどれほど歪んだ感情で君を見ているかなんて君は知らない。
「スザク、朝だぞ」
「わかったよ。ルルーシュ、今いく」
制服に着替え、リビングに行く。ルルーシュが用意してくれた食事。
「おはよう」
「おはよう、ルルーシュ」
ルルーシュはもう席についていた。僕も席につき、手を合わせ食事を食べる。日常になった風景。そう、日常に。
この日常を、壊したいと思っている僕がいることにルルーシュは気付いていない。





「おっはよ〜ルルーシュ、スザク」
「おはよう、リヴァル」
「朝から賑やかだな」
リヴァルがルルーシュの肩に手を回した。あぁ、なんて忌々しい。自然、拳に力が入る。いつもそうだ。ルルーシュが誰かに触れるとそいつを殴り飛ばしたくなる。殺したくなる。ルルーシュに触れていいのは僕だけだ。ルルーシュが見ていいのも僕だけ。あぁ、いやだ。君の世界に他の人間なんていなくなればいい。
「スザク?席につかないのか?」
そこまで考えてルルーシュに名を呼ばれハッとした。ルルーシュが微笑む。僕も微笑んだ。
「どうしたんだ?スザク」
「何が?ルルーシュ、ほら先生もうすぐ来るよ」
僕がいったと同時にチャイムがなった。ルルーシュの席は僕の斜め前。いつも、僕からは君が見えるんだよ。
ルルーシュの癖なんて全部知ってる。だって、子供の頃からずっと君を見てきたんだから。そしてその一つ一つの動作がどれほど人を魅了するかなんて君は気付いていない。







ずっと自分に蓋をした。この感情を表に出せばルルーシュが僕から離れようとすることは明らかだったから。だから自分の感情をずっと隠してきたんだ。でもね、この感情は抑えきれるほど生易しい感情じゃなかったんだよ。
いつもお風呂はルルーシュの後に入るようにしていた。ルルーシュの入った後のお風呂場。そう考えただけで簡単に勃起した。その時に脱衣所にあるその日ルルーシュが着ていた服を掴み、匂いを嗅ぐ。そうしながらルルーシュのパンツで自分のペニスを包み、自慰をする。一緒に暮らすようになってからやり始めたこれは酷く興奮した。
脱衣所の鍵をかけているのでルルーシュが入ってくることはない。でも、気付かれてもいいかもしれないと思っている自分もいる。ルルーシュはどんな顔をするだろう。あの酷く綺麗な顔を歪ませるのだろうか。
ルルーシュルルーシュルルーシュルルーシュルルーシュルルーシュルルーシュ、何度も何度もルルーシュの名を反芻する。目を瞑り、さっきまでルルーシュが入っていた風呂場でルルーシュの今日着ていた服の匂いを嗅ぎながら、ルルーシュの穿いていたパンツで自分のペニスを扱きながら。そして目を瞑りながら思うのはルルーシュのこと。
「ルルーシュ…っ」
そう呟き射精する。ルルーシュのパンツに自分のをかけて。黒いビキニタイプのルルーシュのそれには自分の白い精液がよく映えてた。
ルルーシュは知らない。僕がルルーシュをどんな風に見ているのかなんて。




ある日、女が僕に告白してきた。そんなことは前にもよくあったのだけど、今までずっと断ってきた。でも、今回僕はOKした。ただ、ルルーシュの反応を知りたくて。
「僕、彼女ができたんだ」
夕食の席で言う。このとき気分は高揚していた。あぁ、ルルーシュはどんな反応をするだろう。僕に彼女ができたと知って悲しむだろうか。あぁ、どんな反応をするだろう。その女に嫉妬してくれるだろうか。僕とルルーシュは今までずっと一緒にいた。そこにいきなり他の人間が入ってきて彼は…。
「よかったな。お前に先を越されてしまったな」
朗らかに笑いながら言うルルーシュ。君は今、僕をどれほど悲しみのどん底に突き落としたか気付いているかい?
ルルーシュ、君を犯したくてたまらないよ。





初めてやるセックスは興奮しなかった。浅ましく自分の半身は反応したが性的欲求を解消しただ
けだった。高い嬌声を上げる≪彼女≫を見て思うのはルルーシュのこと。例えばルルーシュが女だったら、ここまで苦しまなくてすんだのだろうか。ルルーシュを自分の彼女にして、うまくいけば結婚もできたかもしれない。そして体を繋げて、幸せに暮らせたのだろうか。そんなこと、考えるだけで無駄だけど。
別にルルーシュとずっと一緒にいられるなら結婚なんかしなくていい。ルルーシュを、自分に縛り付けておけるなら。
ルルーシュを他の者になんて渡せるか。ずっと見てきた。ルルーシュを、ルルーシュだけを。なのに何故、ルルーシュは見てくれないのだろう。ルルーシュとセックスをしたら、きっと今とは比べ物にならないほど気持ちいいに違いない。
ルルーシュ、君が欲しいよ。
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