長編小説

□壊滅の危機
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黒の騎士団が作戦に失敗した。負傷者も何人も出ている。失敗したのは新人の団員のせい。だけど、それを皆はゼロのせいだと責める。
重傷を負ったものもいる。死にそうなほどではないが。だけどそいつらに何も言わないゼロに団員たちが不満をあらわにして。
団員たち全員がゼロの前に立ち、不平不満を言う。藤堂たち四聖剣が止めようとしたがそれは遮られていた。C.C.はそれを見て、憤怒した。
「お前は俺たちのことを何だと思っているんだよ!」
「…」
「おい!何とか言えよ!」
「貴様ら!今日の「いい。C.C.」
その声は普段と変わらず静かなものに聞こえただろう。だけどC.C.にはその声が怒りに満ちているのがわかった。
「っ!今日だって怪我人が出たのはお前の作戦のせいじゃねぇか!」
「やめろ!ゼロのせいじゃないじゃない!」
「カレンは黙ってろ!」
団員たちの意見を代表して玉城が言っているのだろう。ゼロはいまだに黙っている。その時、銃発が響いた。
これには玉城も予想外だったのだろう。驚いている。撃ったのは、下っ端の人間。震える手で銃を構えている。
「お前の、せいで美奈が…っ!」
その美奈という奴は恋人だろうか。どっちにしろ、今日死んだ人間はいない。ゼロがすぐに状況を把握し、指示を出したから大丈夫だったのだ。こいつらはそれがわかっていないのだろうか。
その時、また銃発音が響いた。それはゼロの仮面に当たる。それは割れ、その下からは漆黒の髪に紫色の高貴な瞳。だけど今その綺麗な顔には表情が浮かんでいなく、まるで人形のよう。
ゼロの素顔をこんな形で見てしまった黒の騎士団のメンバーが呆然としている。
「ルルーシュ…」
カレンは呆然とその名を呟く。だけど当のルルーシュは冷静に見える。そう、見えるだけだろうが。
「ゼロ、お前も怪我を…っ」
そう、ゼロは怪我をしている。その状態でメンバーに不平不満を言われていたのだ。それに普段のストレスもたまっている。睡眠時間も少なく、文句ばっかりを言われたらとうの昔にキレている。
ルルーシュは本人が思っているほど冷酷ではない。むしろ甘すぎてC.C.は時々不安になるくらいだ。穏やかな彼が、本気で切れているところなどC.C.は見たことがない。
今日までは。
ルルーシュが笑みを見せた。妖艶ともいえるであろうその笑み。皆が魅せられる。実際、素顔を見て余りの綺麗さに言葉を失っていたのだから。
「ムカつく」
一言言い放った後の彼の表情はすぐにまたなくなった。ルルーシュは放心状態の者たちを放ってトレーラーの中に入っていく。C.C.はそれを追いかけようとしたがあまりにボーとしている団員を見て情けなくなった。
「貴様ら、どうなっても知らないぞ」
本気で切れているようだ。いつもちょくちょく文句は言うがそこには優しさがこもっている。だが、今回は本気だろう。かもし出す雰囲気がナナリーが絡まれそいつらを殺そうとしたときと同じだった。病院送りですんだが、あそこまで動けたのかと疑いたくなった。
C.C.の言葉に意識が戻ってきたのか、また文句を言い始める。
「まだ餓鬼じゃねぇか!」
「もう任せられない!」
「それになんだよ!ムカつくって!そのセリフはこっちだっての!」
幹部はまだ何も言わない。玉城すらも。でも、団員たちの言葉はどんどんヒートアップしていく。
「そう思いますよね!玉城さん?!」
「おっ?おぉ。思う思う。本当に餓鬼じゃねぇか」
いきなり話を振られた玉城が慌てて言う。
「カレン、知り合いなのか?」
「えぇ…。同じ学園の副生徒会長…。ルルーシュ・ランペルージよ」
カレンが悩むように視線を伏せた。文句を言う団員にC.C.は溜息を吐く。
「何だよ!C.C.」
「馬鹿か。貴様らは」
なおも言おうとする皆に向かい、C.C.は見下した視線を向けた。
「黒の騎士団、どうなるだろうな。私は本気で怒ったあいつを初めて見た」
ナナリーのとき以外では、口に出さないがそう思う。その時、トレーラーの階段を下りる音がする。
「C.C.」
名前を呼ばれ、C.C.はルルーシュを見た。団員は何も言わない。ルルーシュが着ているのはシャツ。学生服の下だ。ルルーシュ=ゼロだとまだ結びつかないのだろう。
「何だ?それより怪我は…っ?」
「包帯を巻いた。このトランクの中にこれを入れてくれ。他にもやることがあるからな」
ルルーシュが床にトランクとゼロの仮面と服。アンダーシャツは血に濡れていた。それを見たカレンや扇、皆が息を飲む。それとデスク、本を乱雑に置いた。C.C.はそれらをトランクに詰めていく。
もしかしたら、もしかするかもしれない。
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