小説 他

□雨の涙
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ぽつり、と落ちたのは何だったのか。
「あぁ、」
空を見上げると暗雲が立ち込めていた。それは自分の暗い気持ちを表しているかのようでもあって。それが何故か笑えてきた。
「日本、日本」
寂しいとは言えなかった。きっと、これを言っても前のような関係に戻れるわけがないのだ。それは悲しいことだった。寂しいことだった。だが、それより何よりも辛いのが、
「他の国と慣れ合うなある・・・」
それが何よりも自分にとっては辛かった。



こつこつと靴音がした。それは前の日本の服装ならすることがない音だった。そのことに不快感を持ったのはきっと自分だけじゃない。・・・自分よりも辛く思っている人がいるのだ。
「・・・お久しぶりです」
静かな声からは感情は伺えなかった。あぁ、前は一緒に賑やかに話していたのに、と日本を見る。
「何しに来たんだぜ?」
「・・・別にお話だけでもいいでしょう。兄弟なのですから」
「話に来るだけならそんな恰好で来るんじゃないんだぜ」
「あぁ、これですか」
日本がちらりと自分の服装を見て薄く微笑んだ。
「真似をしたんだぜ?」
「真似?」
「イギリスやアメリカの真似をしたんだぜ?」
「真似じゃありませんよ。教えていただいたのですから」
はぁ、と息を吐いて座る日本に韓国は小さく舌打ちをした。変わって欲しくなかった、と言うのはきっと自分だけの想いではない。
「何をそんなに怒っていらっしゃるのですか?」
「お前の他国に対する態度に苛々してるだけなんだぜ」
「・・・態度に?」
「媚び諂うような態度。・・・前の日本だったらそんな態度はとらなかったんだぜ」
「私、そんな態度をとっていますかね?」
「似合わない服を着て、のこのこここにきて俺たちを馬鹿にしたような態度をとる。それが兄弟に対する態度か?」
「・・・中国さんも怒っていらっしゃるのですか?」
びくり、と今まで日本のことを見もしなかった中国が震えた。
「・・・別に、怒っていないある」
「怒っていらっしゃるでしょう?」
「怒っていないと言っているある!」
「ほら、怒っていらっしゃる」
くす、と言う少しの笑いに韓国が立ち上がり日本を睨みつけた。
「馬鹿にしてるのか!?」
「違いますよ。・・・悲しいのです」
「え・・・?」
「何故、私は変わってはいけないのでしょう」
日本が下を向いて苦笑した。韓国と中国は不思議そうに日本を見る。
「私は自国以外のことをよく知りません。それが悪いこととは思いませんが、他の国の知識を取り入れることをするべきだと考え始めたのです。・・・貴方達は私が変わったと、他の国に媚びていると思っているようですが、それは違います。私はただ前を向いて進もうと思っただけですよ。日本の未来のために」
日本がそう言い立ち上がった。
「・・・今日は話をしても何も聞いてくれそうにないのでもう帰りますね」
「・・・っ、日本」
「私は、」
日本を呼びとめようとした韓国の言葉を遮り日本が言葉を発する。
「私は貴方達と共に進みたいと思っています。・・・兄弟喧嘩など、本当はしたくはないのですよ」
兄弟喧嘩、と言うほど軽いものじゃないと言うのは何より日本が分かっているはずだった。だがそのまま部屋を出ていこうとする日本を韓国も中国も止めることができなかった。
「我も、したくないあるよ・・・」
ぽそっと呟いた中国の言葉に韓国も小さく頷いて下を見た。
「兄貴、日本は着物が一番似合っていたと思いませんか?」
「・・・そうあるな」
「でも、実を言うと日本の今日の服、似合っていたと思いますよ」
韓国の言葉に中国がこつん、と韓国の肩に頭を乗せた。
「我もあるよ」
その声がどこか寂しそうで、韓国は瞳を伏せた。




「おや、雨ですかね」
ぽつり、と顔に飛沫が当たり困ったなと思って顔を上げる。暗雲が立ち込める空は自分の心を表しているようで。
「ふふ、似合わないと言われてしまいましたねぇ」
似合うとは思っていなかったけど、と思って苦笑した。着なれない服、窮屈で、息苦しい服。でも、踏み出すのには大事なものだった。
「中国さんのあんな顔、見たくはなかったんですけどね」
中国のあんなに悲しそうな顔と、韓国のあんなに辛そうな顔。見たくはなかった。できたらあの二人にはいつも笑っていて欲しかった。
それは自分のただの我儘なのだとは分かっているけど、願わずには居られなかった。























雨の涙
  それは、自分の

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