小説 他

□喧嘩するほど仲がいい
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「俺が悪いんじゃないんだぜ!日本が悪いんだぜ」
韓国の言葉を聞いて中国と香港と台湾が日本に顔を向ける。韓国もちらっと日本を見た。
「あ、謝れば許してやるんだぜ!」
元はと言えば日本が悪いのだ、と韓国は腕を組む。中国の家に皆で遊びに来て、それで自分の分、と残しておいた桃を日本が食べた。それを見つけて誰が食べたのかと香港に聞くと日本が食べたと言う。
それで怒って日本を探すと彼は台所に居て何かを作っていた。
「日本が、俺が大事に残しておいた桃を食ったんだぜ!」
こちらを向けと言っても日本が向かないものだから思わず腕を掴むと日本が持っていたボールを落として中身が駄目になってしまったのだ。
「だから、俺は悪くないんだぜ!」
そしたら日本が逆に怒ってきた。最初に、自分の桃を食べたのに、怒られるのは日本のはずなのにということで今に至る。
「・・・日本、一応謝るある」
「一応って何だぜ!?兄貴!」
「はいはい。落ち付きなさいよ。そもそもあんたさっき桃いっぱい食べてたじゃない」
「最後の一個は格別なんだぜ。なのに日本は食べたんだぜ!」
「その件に関しては、申し訳ありませんでした」
にこっと笑って日本が言った。謝られたことに韓国は笑顔を浮かべようとするがその前に日本がまた話しだす。
「私も反省してますので。・・・韓国さんはもう私なんかと話したくありませんよね。仕方ないです。韓国さんの大事に残しておいた桃を食べてしまったんですからね。それじゃあ、もう韓国さんは私と話すのすら嫌ですよね。それならもう話さなくても結構ですよ」
何かを言う暇もなく話されて何も言えなくなってしまう。何かを言わなければ、と思うのだが言葉が出なくて戸惑っていると日本が立ち上がった。
「どこ行くある?」
「台所ですよ。先程のを片づけなければ」
「俺も手伝うっス」
「ありがとうございます。香港さん」
香港も日本が歩く後に付いて行って部屋の中は3人だけになってしまった。
「・・・日本さん、怒ってるんじゃない?」
「多分そうあるな。どうするある?韓国」
「・・・俺は悪くないんだぜ」
ぼそっと呟いて韓国は下を向いた。
「俺だって話したくなんかないんだぜ。日本となんて話さなくても平気なんだぜ」
強がりで言うと中国と台湾が小さく溜息を吐いた。
「・・・早く仲直りするあるよ」
中国にぽんぽんと頭を撫でられて唇を噛み締める。ケンカなんてしなくなかったんだぜ、と頭の中で思って、瞳を伏せた。




「・・・怒ってんスか?」
「・・・怒っていない、と言っては嘘になりますね」
「でも韓国には悪気はねぇと思う」
「そうでしょうね。・・・桃を使ってしまったことは悪いと思っているんですよ。最後の一個、残していたんですね」
桃が一つ、切っていない状態で残っていたから使おうと思ってもらってしまった。
「桃、何に使うんスか?」
「・・・お菓子を、作ろうと思ってまして。桃も飾りつけにもしかしたら使えるかもしれないともらったんですよ」
「そうだったんスか・・・」
香港が拭いているものを見て肩を落とした。
「食いたかった・・・」
「今度また作りますよ」
「Thank you。・・・約束っスよ」
にこっと笑う香港に胸がホワンと温かくなるのが分かった。
「はい、是非食べて下さいね」
頷く香港の頭を軽く撫で、日本は微笑んだ。




「シナティちゃん可愛いんだぜ」
普段は全く興味などないシナティ人形を抱きしめる。
「ほら、湾も抱いてみるんだぜ」
台湾に渡すと台湾も受け取ってぽふぽふと顔を埋めた。
「うん、可愛い」
「だろ?香港も抱くんだぜ」
「別にいい」
「こら、香港!」
小声で台湾が香港を嗜めると香港が渋々ながらも人形を受け取る。
「感触がマジパネェ」
ぐにぐにと手で遊びながら香港が言って人形を韓国に返した。韓国は中国を見るが首を振られる。
「我はいつも触ってるからいいある。・・・それより」
最後の言葉を中国が小声で言って日本を見る。日本は皆に背を向けて庭を見ているのでその仕草には気づいていなかった。
「このシナティちゃん、めっちゃふわふわしてて気持ちいいんだぜ。・・・日本にも貸してやらないこともないんだぜ」
ちらっと日本を見るが日本は相変わらずの体勢で聞こえていなかったみたいな反応をする。
「どうしてもっていうなら、貸してやるんだぜ」
だんだん声が小さくなってしまう。目の前が滲んで涙を流さぬようにと韓国は人形を抱きしめ、唇を噛んだ。
「・・・日本さん、これめっちゃパネェっすよ」
「本当に気持ちよかったですよ。日本さんも触ってみてください」
台湾と香港が韓国を可哀想に思ったのか助け船を出す。香港と台湾の呼びかけに日本は振り向いて少し微笑んだ。
「そうですか。・・・でも、私は遠慮させて頂きます」
フイっとまた外を向いてしまって押さえていた涙がとうとう溢れてしまった。
「まだ、怒ってるんだぜ?」
ひくひくと泣きながら日本に問う。それにも日本は振り向かないから本当に怒っているんだ、と余計に涙が出てきた。
「・・・俺も、悪かった、ん、だぜ」
泣いてるせいか流暢な言葉を喋れず、強がろうとしてもそれは情けないだけだった。
「日本、ごめ、ん、なんだ、ぜ」
だが一向に日本がこちらを向く気配がないので韓国は人形を抱きしめて声を上げて泣きだした。
「ごめ、なさ・・・っ、うぁっ、ごめ、」
涙で前が全く見えなくなる。ただ、日本に嫌われるのは嫌だった。日本が自分のことを無視するのは怖かった。
「ごめん、なさ、い・・・っ」
必死で言葉を出して人形に顔を埋めた。その時、ふわり、と何かに頭を包まれた。



「もう怒っていませんよ」
韓国を抱きしめながら言うが、韓国は未だに泣き続ける。それに苦笑をして頭を撫でた。
「すみません。貴方が可愛いものだからつい苛めてしまったんですよ」
「もう、怒って、ない?」
幼子のような言葉で問われてにこっと微笑む。
「はい。もう怒ってなどいませんよ。・・・私も貴方の桃を食べてしまって申し訳ございませんでした」
「いい、ぜ。俺も、怒って、なん、か・・・」
絞り出すような声で言われて日本は微笑んだ。
「ありがとうございます。それでは仲直りですね」
日本の言葉にこくこくと頷く韓国に笑みが深くなる。韓国は抱いていたシナティ人形を放り投げて日本に抱きついた。
「仲直り、なんだ、ぜ」
「えぇ」
そんな韓国と日本を他の国は微笑んで見ていた。





2ヶ月後、再び中国の家に亜細亜諸国は集まっていた。
「はい、デザートですよ」
そう言って日本が食後に差し出したのはスコーンだった。
「うまいんだぜ!」
「本当、おいしい!」
「うまいある。どこで作り方知ったあるか?」
「イギリスさんに教わりまして」
「アヘンにあるか!?・・・殺すある」
「賛成だぜ!兄貴」
「止めて下さい。・・・結構うまく作れるようになりましたから皆さんに食べて欲しかったんです」
ふふっと日本は笑って香港を見る。
「香港さんとの約束でもありましたしね」
「マジ旨いっス。・・・あのイギリスから教わってこんなにうまいの作れるなんてmiraculo」
「ありがとうございます。・・・皆さんに食べて欲しかったですからね。まだまだたくさんありますからいっぱい食べて下さいね」
皆が勢いよく頷いてスコーンに手を伸ばした。それに日本は嬉しそうに微笑んだ。



















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