小説 他

□知っていましたか?
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「日本くん、日本くん」
楽しそうな声で名を呼ばれ振り向くとロシアがいた。にこにこと微笑んでいるが何を考えているかは分からない。そんな、ロシアが。
「日本くん、今度君の家に行ってもいいかな」
君の家は今温かいんでしょう?と言われ返答に詰まってしまう。正直苦手なのだ。この男のことが。
「それとも僕の家にくるかい?」
「結構です。・・・少し最近立て込んでいるので。また都合がついたときにでもお邪魔させて頂きますね」
遠まわしに断ると残念だなぁ、とロシアは言った後に自分に近づいてきた。
「日本くん、僕のことが苦手でしょう?」
「何、を・・・」
「大丈夫だよ。隠さなくて。でも僕は君のことが大好きだよ。ロシアになって欲しいくらいに」
「・・・それはただの侵略でしょう?」
「そうかな?・・・そうかもしれないね。でも本当に僕は君のことが好き」
「・・・ありがとうございます」
びくびくとしてしまう。だけど向けられている愛情は確かにあるものなのだと思うと嬉しくもあった。
「日本くん、大好きだよ。例え君が僕のことを嫌いでも」
大好きなんだ、呟くように言われて日本はロシアを見た。いつもの笑顔が少し寂しげになっているのは、ただの気のせいだろうか。





「・・・また日本を構っていたあるか?」
日本と話した後、会議室に戻ると中国が話しかけてきた。そうだよ、と笑うと溜息を吐かれた。
「あまり意味のないことはしない方がよろしいある。・・・余り日本を怯えさせないで欲しいある」
「怯えさせてるつもりはないんだけどなぁ」
「お前と接する日本を見たら皆怯えてると思うある。自粛するがよろし」
「やっぱり、そうかな」
自分でもそう思うんだよ、と寂しく思うと中国が驚いたように目を見開いた。
「・・・お前がそんなこというと思わなかったある」
中国の正直な感想に思わず苦笑する。
「・・・我は日本が大事ある。とても可愛いね。でも、日本はもう我の手を必要とはしていないある。・・・だけど、日本が他国に付くのを笑顔で見てられるほど我は寛大じゃないあるね」
「うわぁ、独占欲丸出しだね」
「そう取ってもらって構わないある」
「・・・でも、君の気持ち凄くよくわかるよ」
日本が、他の国と仲良くするのはいい気分じゃない。アメリカやイギリス、イタリア、どんな国でも日本と仲良くするのは嫌なのだ。日本の瞳に映るのは自分だけならいいのに、とロシアは微笑む。
「我に付いてくれたら、守るのに・・・」
ぼそっと中国が呟きそしてどこかに行ってしまった。あぁ、中国も寂しいのだと思う。
「中国くんは、愛されてると思うけどなぁ」
日本にとても愛されてると、信頼されてると思う。中国に対する日本はとても可愛いと他の諸国は思っていると思うよ。本当に、兄を慕うような。
「まぁ、言わないけど」
敵に塩を送るようなことはしない。自分に不利になるようなことなど。
「はは、まぁ僕は最初から最悪なのかな・・・」
日本の自分の評価は、そう思って自分で落ち込んでしまった。




盛大に溜息を吐く。
「これは、どうしましょうかね」
ロシアにあそこまで純粋に告白のようなものをされるとは最初、日本は思っていなかった。だが、それを毎度会うたびにされるようになり日本自身、何か返事をしないと悪いような気がしてくる。
「・・・嫌いでは、ありませんかね」
最初は苦手だと思っていたが、最近はそうも思わない。むしろ何故だかロシアのことを考えてしまうほどだ。これは、きっと苦手という感情とは反対の感情なんだろう。
「いつも向こうは余裕綽々ですもんね」
たまにはこちらが余裕を持って向こうを振り乱してやろう。
「私の方が年上ですもんね」
そう思って微笑み、口を押さえた。





「日本くん、こんにちは」
「こんにちは、ロシアさん。よくこんにちはという言葉を知っていますね」
「勉強してるんだよ。日本語」
「そうなんですか?嬉しいです」
「日本くんが大好きだからね」
「ふふ、そうですか」
うん、と頷くロシアを見て日本は微笑んだ。
「ロシアさんは私のことがお好きですか?」
「うん。好きだよ。・・・日本くんは僕のことが苦手だよね」
知っているから別にそう言っても大丈夫だよ、と小さな声で言われて少しムッとしてしまう。確かに最初は苦手だったが今はそうじゃない。
「私が貴方のことをお嫌いだとお思いですか?」
「・・・だってそうじゃないの?」
「えぇ、確かに苦手でした」
そう言いロシアの顔を見る。ロシアは一瞬悲しそうな顔をした後、またいつもの笑みを浮かべた。
「知ってるよ」
「最初は、ですよ。・・・最初は苦手でした」
「・・・今は大嫌いとでも言うの?」
「今は、」
くすっと笑って日本はロシアの瞳を真っ直ぐに見た。背の高いロシアの顔を見上げるようにしながら。
「今は、大好きですよ」
そういうとロシアの顔がきょとんとした後、真っ赤になる。その初々しい反応に逆に日本も照れてしまって。
「え、えぇ?」
「あ、いえ、その・・・」
口元を押さえて顔を隠す様にして照れているロシアに日本も同じようにおどおどする。予想外のロシアの反応。しかも可愛すぎる。
「私、もう会議室に行きますね!」
逃げるように行こうとして日本はロシアを振りかえった。
「嘘では、ありません。・・・今度ロシアさんの家にお邪魔してもいいですか?」
「う、うん!待ってるよ」
「えぇ」
あぁ、こんな反応をされるとは思っていなかった。
「あんなに可愛らしい方だとは・・・発見ですね」
ロシアを想うと心が温かくなる。やっぱりこれは愛しいと言うことなのだろう。
「ロシア・・・楽しみですね」
今の時期は寒いみたいだからうんと温かくしていこう。お土産も温かいものを。
「楽しみです」
そう思って日本は微笑んだ。
























知っていましたか?
  私は貴方のこと、大好きなんですよ

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