小説 他

□Turn the pages
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そう、それはただページを捲る様に過ぎていく。


















小さな子供が指をさす。「お前は本当にそこにいていいの?」その子供はよく見ると自分で。そしてその世界は歪み、自分も立っていられなくなる。そこで気付くんだ。

あぁ、ここはもともと世界ではなかった。



「ラビ?何をボーっとしてるんですか」
こつっと頭を叩かれてラビはハッと目を開いた。顔を上げるとまず最初に顔を覆う白が目に入った。
「ごめん、どした?」
「いえ…、何でもないんですが一点を見つめてボーっとされると心配になりまして」
「ごめんごめん。きっと寝不足さぁ」
「それならいいんですが。ちゃんと寝てくださいね」
くすっと笑うアレンにラビは笑った。いつものように、朗らかな笑みを浮かべて。
時が過ぎるのは早い。喜怒哀楽、人々の感情を左右させるできごと、そして、世界を変え得る影響を持つ者…それら全てを記録しなくては。そう思ってラビはアレンを見る。
アレンはそう言う意味では記録の対象。そう思っている。いや、分かっているはずなのに。
「どうしたんですか?」
「何でもないさぁ」
愛してしまうなんて。




アレンは皆に愛されている。そして、アレンも皆を愛している。その愛情は広い。悪魔にまで及ぶその愛情は危うさまで秘めている。
だけど、本当にそうか?そう思ってティムと遊ぶアレンを見る。仮面を被り、偽りの自分を演じているんじゃないか。
もしそうだとしたらそうさせているのはマナ、という人物だろう。アレンに多大な影響を与えた。自分は何も知らないが、これから否が応でも知っていくだろう。
知っていかなければならないだろう。
アレンの瞳には何が写っている?悪魔の瞳が写すものは必ずしも綺麗なものとは言えないだろう。そう思いラビは薄く笑う。いや、違う。もしかしたら人の目が映し出す世界の方が汚いかもしれない。
「アレン〜」
「何ですか?」
「アレンの世界は、どこにある?」
アレンがティムから目を離しラビの目を見た。質問の意味が分からないのか不思議そうな顔をしている。それもそうだろう。ラビだって何でこんな質問をしてしまったのか意味が分からないのだから。
「何を言っているんですか?」
「ん〜純粋な疑問さぁ。アレンは本当にエクソシストになりたくて黒の教団に入った?」
「当たり前じゃないですか」
「本当にそうか?」
顔からラビは笑みを消した。
「本当にそれは“アレン”の意思?」
「…は?」
「それは、“14番目”の意思じゃないってアレンは言いきれる?」
「…僕は14番目にまだ侵蝕されていませんが?それは君も知っていますよね」
「知っているさぁ。俺もそこにいたんだからな」
「なら何故そんな質問を?僕の意志は僕の意志です。他の誰のものでもありません」
「それは、お前の言葉?」
「だから…」
「お前は本当にアレン?」
アレンに近寄り目を見据える。顔に薄く笑みを浮かべながら。
「本当に自分はアレンだって言いきれるのか?だってもしかしたらそれすらもつくられた人格かもしれないのに」
「止めてくださいますか?」
「何で?もしかして自分が不安に思っていることを言われて怖くなった?」
「止めてくださいと言っているんです!」
「…ごめん」
身体を細かく震わせるアレンに近寄りその体を抱きしめる。こんなことをいいたいわけじゃなかった。
「アレン、俺はお前のことが好きさぁ。お前のことを愛してる」
「何を、言っているんですか」
「俺は、アレンに愛してるって言ってるんさ」
バッと顔を上げるアレンにラビは微笑んだ。

愛を知らない、餓えた子供は目の前にいる同じような子供に向かって微笑んだ。

その笑顔を受けて、少年は笑う。安心したように、そしてどこか嬉しそうに。
「世界は、作ればいいんですよ。自分の進む道こそが自分の世界になっていくんですから。迷ったら誰かに手を差し伸べてもらえばいい」
「まるで、俺達みたいだな」
「そうですね。エクソシストはそれに似ています」
そして顔を伏せる。目を閉じて祈る様に。



「哀れなアクマに魂の救済を」












ページを捲れば新たな知識を得られる。その続きにあるものを知ることができる。
それは至福の時。

なぁ、だからアレン。俺は思うんさ。俺達が一歩を踏み出せば未来にあることを知ることができる。


世界を、知ることができるんだ。



























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  お前のことも記録させてくれ(だから心を開いて)

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