エゴ

□その野分、弘樹につき…
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「……くそっ……飲み過ぎた。」



原因は、学部長の息子と痴話喧嘩した宮城教授のヤケ酒に付き合わされたからだ。


散々愚痴られた挙げ句に、目いっぱい飲まされて……


オマケに…今日こそ野分が帰って来るだろうと思いきや…淡い期待も見事に裏切られて…

「…ったく。たまには帰って来いっての…。」


火照った体をベッドに投げ出し、天井を見上げると…なぜか野分の顔が浮かんでしまう。


……それも

オレを抱いてる時の熱っぽい黒い瞳…。



「……い…いかん。……思い出してしまった///」


打ち消すようにゴロンと寝返りすると、ゴリッと有り得ない塊が弘樹の腰を持ち上げた。



「……いっ!?…なっ、なんだっ!?」



ゴソゴソとパンツを捲った弘樹は、びよょ〜〜〜んと頭を出したソレに目を丸くする。





…なんだこりゃ!?


つか、コレってオレのか?

オレのなのか!?


違うだろっ!

どー見ても、オレんじゃねーだろっっ!


しかも、こんだけオレが驚いてんだ…普通は縮みあがるだろっ。

なのに…パンツの中に収めようとしても、頭出しまくりっていうこの節操の無さはなんだっ!


こんなの絶対にオレのじゃねー!



……い…いや待て待て

オレのじゃなけりゃ、誰のだっていうんだよ。



弘樹は、ギンギンに張りつめたソレをもう一度見直した。


………知っている。

オレは、コレを知っている。


この形…そして、オレの手で収めきれない、このデカさ…。


……そう、これは

…野分の…野分のアレにそっくりだ。



「……って、…んなわけねーだろっっ!何考えてんだオレっ!」


だいたい、自分のコレが野分のアレに見えるって時点で、おかしいんだよ…。


…これは

……………酒のせいだ。


だって、オレすっげー酔っ払ってるから、酒の力が見せる都合の良いモンだ。


…妄想の産物を見てるだけなんだ。


そうに違いない。




弘樹は、そう思い込むことにして目を瞑るが…


どうしても熱を持った股間が気になって…こんな状態で眠れるはずもない。


………確かに


ずっと野分としてないから、たまってるのは事実だ。




「一応…ぬいとくか…。」


パンツからハミ出したまま、一向におさまる気配のないソレに手をのばし、指先でツンツンと突ついてみると、待ちかねたように跳ねたソレの先っぽは、期待するかのように忽(たちま)ち濡れそぼる。


ギュッと握ると、負けじと膨らむ。


………おぃ

一応オレにくっついてるアレのクセに、やけに挑戦的じゃねーか。


「…なんて生意気なやつだ。」

……そういうヤツは、

こうしてやるっ!


眉間にシワを寄せた弘樹は、両手でソレを握ると…勢い良く扱きだした。


「……ぁ…///…んっ///」


……しっ…しまった。


野分のアレに見えるとはいえ…コレは自分のだった…。


乱暴に扱いたのに、めちゃくちゃ気持ち良くて声まで出ちまったじゃねーかよ!



………オマケにコレは余計デカくなってるし…。


……………熱いし…。



そういえば、野分(あいつ)とする時って…オレがされるばっかで…


あいつのアレを扱くのは…10回に1回くらいか?


そんなことを考えながら、今度は優しく擦ってみると、甘く蕩けるような快感が弘樹の体を包んだ。


「………っん…///」



…………………。


……もしも

…これが野分のだったら


………こんな風に感じてくれるのだろうか。



頭に浮かぶのは、欲情した野分の黒い瞳と汗ばんだ体…。



「………野分…///」


……野分に抱かれている


そんな感覚が弘樹の体を支配し…快感を追い求めるように艶めかしい手は、ソレをスライドさせる。


「……んっ///…はぁはぁ……の…わき……のわ…き…っ///」



瀑ぜた生暖かい体液がシャツをつたってシミを作り、心地良い快楽が弘樹を包んだ。



…………会いたい。


せめて…声だけでも聞きたい。



そんな想いが携帯を掴むと、突然着信音が鳴り響き、心臓が口から飛び出るほどビックリして、うっかり落としそうになった携帯を慌てて掴みなおした。


「も…もしもし。」



『あ、ヒロさん?野分です。』


のっ野分ーっ!!!


「…どっ…どどどうしたんだよ?こここんな夜中に…」

なんで、このタイミングなんだーっ!

『すみません。仮眠とってたんですけど…どうしても声が聞きたくて…』

「そ…そうか…。オレもお前に……その…電話しようか…なんて…おっ思ったとこで…。あ、いや、別に用があったわけじゃないんだけど…」

声が聞けたのは嬉しいけど、声だけで良かった。

こんな姿は見せられないし、見られたら困るっ。

『……嬉しいです。』


オレだって嬉しい。

嬉しいのに、今の今までしていたことを考えると、

……野分の顔を見ずとも

………いたたまれない。

「……ばか…///。もう切るしっ!じゃあなっ」

『えー。もう切っちゃうんですか?』


名残惜しそうな野分だけど、きっとロクに眠らずに働いていたに違いない。


「お前のことだから仕事しっぱなしだろ?体…休める時間あるなら、少しでも眠れ。」


『くすっ。…はい。』


………野分

「……じゃ…切るぞ。」


『あ、ヒロさん。』



「なに?」


『……愛してます。おやすみなさい。』


………好きだ…。


「……っ…///おやすみっ!」


勢いにまかせて電話を切ったのはいいが、物寂しさだけが残る。


…………会いたいとか、好きだとか…いつまでも経ってもこっ恥ずかしくて、なかなか口には出来ないオレ…。


「……情けない。」


うなだれた弘樹の視線の先には、イったばかりだというのに上を向いたままのアレがあった。



「………。お前も少しは萎えろってんだ。ったくマジ野分みてーだな…。」


そう言って、先っぽを思いっきり指で弾いた弘樹は、あまりの痛さに股間をおさえてうずくまるのだった。



(おわり)


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