エゴ
□その弘樹、野分につき…
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…………ん…?
連日連夜の勤務が続き、さすがにクタクタだった野分は、宿直室で仮眠を取っていたのだが、突然股間が窮屈になり目を醒ました。
…あ…あれ…勃ってる?
「このところ…ずっとヒロさんに会えてないから、溜まってんのかなぁ…。」
白衣を脱いで、倒れ込むように眠りについた野分は、膨らんだ股間をジーンズから解放した。
「ふー。楽になった…」
………ヒロさんに…会いたいな…。
目を閉じ目蓋の裏に浮かんでくるのは、ちょっと拗ねたような瞳と可愛い唇…真っ白な肌にピンク色の乳首…。
…ああ、ヒロさん
…………会いたいです。
野分は、ゴソゴソと股間のモノに手を伸ばす。
……………?
「……あれっ?」
なんか…いつもと感覚が…?
違和感を感じた野分が、パンツを捲ってソレをマジマジと見つめると
……………違う。
…コレは…俺のじゃない。
…でも、
見たことがある…というか、見慣れた形をしてる…。
………ヒロさんのアレに
…そっくりだ。
…い…いや
…そんなはずは…。
でも、見れば見るほど、ヒロさんのアレに瓜二つ…。
この形といい、くびれといい、先っぽの濡れ具合といい…まさにヒロさん…。
試しに野分がソレに触れてみると、ピクンピクンと小刻みに震える。
………ああ///
この反応の仕方も…ヒロさんにそっくりだ。
……………。
………自覚ないけど、自分についてるものが、ヒロさんのアレに見えるくらいに、俺って疲れてるのかな…。
ヒロさんのを握ってるみたいな錯覚を起こすくらいだもんな…。
“きっと、これは欲求不満の成せる技だ。”
そう野分はアッサリ納得してしまった。
ギチギチに硬くなっているソレを、弘樹にいつもしているように優しく手のひらで包み扱いてみると、今まで自分では感じたことのない快感に身体を支配されてしまう。
「………ん…っ…///」
一気に背中を駆け上がってくる甘い快感の波に体を丸めた野分は、
………俺のじゃないみたいだ。
ヒロさんだったら…こんな風に感じてくれてるのかな。
いつも1人寂しく自分のソレを慰めている野分だったが、今日は違う。
今ここに、自分の脳が都合良く想像した形の弘樹のモノがあるのだ。
野分は、弘樹そっくりのソレを夢中で愛撫しながら、弘樹の細い肢体から漂う色香…そして、快感に酔いしれる甘い声…。
なまめかしい弘樹の姿が、野分の頭の中をいっぱいにしてしまう。
………ヒロさん
…ヒロさん、ヒロさんっ
「……っ…んっ…///」
野分の手の中でドクンと脈打ち、伝わってくる生暖かさに苦笑いしながらノロノロと体を起こした。
……俺は
…どれだけヒロさんに飢えてるんだろう。
……ヒロさんに…会いたい。声だけでもいいから聞きたいな…。
そんなことを思いながら、水道で手を洗い硬く絞ったタオルでソレを丁寧に拭き取る。
自分のアレなら、もっとぞんざいに扱うのだが、弘樹そっくりのソレには、それが出来ずにいた。
………ヒロさん…まだ起きてるかな…。
見上げた時計は、23時を少し回ったところだ。
野分は、こっそり弘樹の寝顔を待ち受けにしている携帯を取り出し、コールは5回と決めて電話をかけてみた。
『も…もしもし。』
意外にも、2回目のコールでヒロさんが電話に出てくれた。
「あ、ヒロさん?野分です。」
『…どっ…どどどうしたんだよ?こここんな夜中に…』
なぜそんなに慌てているのかと、不思議に思う野分は首を傾げながらも、久しぶりの弘樹の声に胸が高鳴った。
「すみません。仮眠とってたんですけど…どうしても声が聞きたくて…」
と言いながらも、直前まで弘樹をおかずに如何(いかが)わしい行為をしていたのは……内緒だ。
『そ…そうか…。オレもお前に……その…電話しようか…なんて…おっ思ったとこで…。あ、いや、別に用があったわけじゃないんだけど…』
くすっ…すぐに出てくれたのは、ヒロさんも同じこと考えてくれてたのかな…。
「……嬉しいです。」
『……ばか…///。もう切るしっ!じゃあなっ』
「えー。もう切っちゃうんですか?」
『お前のことだから仕事しっぱなしだろ?体…休める時間あるなら、少しでも眠れ。』
「くすっ。…はい。」
ホントは、ヒロさんの声聞いてる方が元気になるんだけどな…。
『……じゃ…切るぞ。』
「あ、ヒロさん。」
『なに?』
「……愛してます。おやすみなさい。」
『……っ…///おやすみっ!』
ブツン!
「…あ…切られちゃった。」
くすっ…明日は帰れるかな。
早くヒロさんに会いたいな…。
野分は、乱暴に切られた携帯に微笑み、そして愛おしげにキスをするのだった。
(おわり)