エゴ
□+星空+
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「…キレイなもんだな。コレは街にいたんじゃ見られない。」
「今夜は新月ですから、月明かりもないですし…小さな星もいっぱい見えますね。」
…ヒロさんと2人で浜辺から見上げる空には、数え切れないほどの輝く星が広がっている。
「こんな星を見るのは、ガキん時に秋彦と見た以来かな。って言っても山だったけど…。」
…見上げる空に、あの人と見た星空を思い出すようなヒロさんの横顔に、
……ちょっとだけ
落ち込んでしまう。
「…そう…ですか。」
溜め息が白く変化していくのを気づかれなくて息を小出しにすると、ヒロさんが突然こっちに顔を向けるから…驚いた。
「…な…なんですか?」
「…野分。またお前…何かくだらねぇ事考えてるだろ?」
「そんなんじゃないですよ。…ただ…ヒロさんが子供の頃に見た星空は、どんな空だったのかな…って…。」
あの人と一緒に見た空は、ヒロさんにとってどんな風に映っていたのだろう。
「これと同じくらいキレイだったな。ただ満天の星と、蛍のコラボだったから感動は大きかった気がする。」
……“野分と見ている星空が一番綺麗だ。”と言って欲しいのに…
…あの人と一緒に見たのが一番って言われると…ちょっとショックも大きい。
…でも
こればかりは…どうにもならないって分かっているから
俺の知らないヒロさんを知っているあの人に、嫉妬する自分の心の狭さを笑顔で隠すのだ。
「…野分?」
月明かりのない…星だけが瞬く暗い浜辺で、ヒロさんを抱き寄せると
「くすっ。ホント…お前ってあったけぇのな。」
いつもなら、人目を気にして真っ赤になって怒るヒロさんだけど…
ここまで暗くて寒いと、浜辺にも人気がまったくないから…ヒロさんは暴れることもなく俺の腕の中で大人しくしている。
…ずっと
このままでいたいけど、…ヒロさんに風邪を引かせるわけにはいかない。
「…そろそろ帰りますか?」
「んー?…いや…お前が大丈夫なら…その…///…もう少しだけ…」
“一緒に見ていたい。”
…ヒロさんの囁く小さな声を、俺は絶対に聞き逃さない。
「…はい…いいですよ。」
…だってそれは、
恥ずかしがり屋な可愛いヒロさんの…精一杯だから…。
「…星…キレイだな。」
「ヒロさんの方が綺麗です。」
「バカやろ///…なんの話してんだよ。星だろっ星っ!」
俺の腕の中で、照れるヒロさんの体温が1℃上がる。
ヒロさんが寒くないように更に抱き込むと、
「寒いか?…やっぱ寒いよな…。」
湯たんぽ代わりとでも勘違いしたのか、ヒロさんが俺を心配する。
「寒くないですよ。だってヒロさんが一緒ですから…。」
ヒロさんが満足するまで星を眺めて…あの人と見た思い出の中に少しでも良いから割り込みたい。
空に視線を向けるヒロさんに、そっと口づける…。
…さすがに怒るかな。
そんなことを思ったら、ヒロさんは意外にも目を閉じてくれた。
…外気で少し冷たくなったヒロさんの甘くて柔らかい唇。
ヒロさんに、しつこいと言われる前にキスを止めなければ…と思うのに、
体中がヒロさんを欲しがるから…ヒロさんの体を反転させて…また口づける。
……離れない。
「……んっ///…のわ…っ…。」
………離れられない。
もっと…ヒロさんに触れたい。
……もっと…ヒロさんを感じたい。
…欲望に忠実な俺の手は、ヒロさんの熱を確かめるように股間を弄(まさぐ)る。
「………っ…///お…おいっ!?野分っ、お前どこまでする気だ!?」
ヒロさんの口から出てくる言葉とは裏腹な体の反応に期待しながら、
「………どこまで…って、出来る限りです。ヒロさんが嫌なら…やめますけど…。」
駆け引きする自分は…なんてズルいのだろう。
「……出来る限りって…オレが嫌だって言わなきゃ…最後まで…ってことか?」
「はい、そうです。」
悩むヒロさんを抱っこするようにして、コンクリートの護岸に座り腰を跨いでもらう格好で答えをジッと待っていると
辺りを見回したヒロさんは、恥ずかしそうに俯く。
「……ちょ…ちょっとだけなら…///」
…ああ…どこまでヒロさんは可愛いんだろう。
「くすっ。じゃあ…ちょっとだけ…。」
ヒロさんのズボンを太腿までずらして、硬くなりつつあったソレを手のひらで包みゆっくりスライドさせると、
俺の肩に額をのせて、小さく喘ぐ。
「…俺の手…冷たくないですか?」
「…うん…冷たくない。……気持ち…い…」
膝を立てたヒロさんの…なまめかしい腰に…すごくそそられる。
………ヒロさんって呼んだら
…キスして欲しいって
…ヒロさんに伝わるだろうか。
「…ヒロさん。」
控えめな吐息を漏らし、俺の髪に細い指を乱暴に絡めたヒロさんは、唇を寄せてくれる。
「……は…ぁ……の…わき…。」
さざめく波のように揺れる体は、服を着ていても透き通るような肌を彷彿(ほうふつ)とさせる。
「ヒロさん…色っぽ過ぎ…。」
「……お前が…弄るからだろうが…///」
「……すごく…いやらしい顔してる…。」
「…っ///…も…ぅ…黙れ……///」
悪態をついてから、俺の口を塞ぐように唇を重ねるヒロさんを一頻(ひとしき)り味わって…股間を手のひらで追い詰めると…
「…ぁ…///…野分っ…ダメ…」
「どうしてです?」
「服…汚す…って…ぁ…ぁっ…///」
「大丈夫です…俺の手の中に…出していいですから…イって下さい。」
「イ…ヤだ…オレばっか……」
フルフルと首を振り、既に窮屈になっていたジーンズから、俺のを開放したヒロさんは
「……一緒に…イきたい…///」
「くすっ。じゃあ…一緒に…」
2人分の熱を一緒に扱くと、トロトロとヒロさんの先端から溢れる蜜と混ざり合い、クチュクチュと卑猥な音が響く。
「……はぁっ…はぁ…っ…野分……ぁっ…///」
「ヒロさん…っ…。」
ドクンと波打つ脈動と生暖かい感触が手のひらに伝わってくる。
荒い呼吸を繰り返すヒロさんを抱きしめて
「……続き…どうします?」
「はぁ!?…つ…続きって…まさか!?」
全然萎える事のない俺の股間に目をやり、渋い表情を浮かべるヒロさんは
「……お前…イったばっかなのに…コレかよ?」
「…すみません///久しぶりなので、全然おさまらなくて……。」
「いや…別に謝らなくても…いい。…けど、続きは無しだ…。」
「…ヒロさん?」
「うちに帰ろうぜ。この時期、医者のお前が風邪ひいたら大変だし。……それから…。」
「………それから?。」
「…つ…続きをするんだろ…?」
口ごもるヒロさんが可愛くて自然と頬が緩んでしまう。
「はい。もちろんですっ!」
「……あとさ…」
「はい?」
「また、一緒に星見ような。」
「はい。今度は最後まで出来るように、もっと暖かい時にしましょう。」
ゴキッ!
うっかり口をついた言葉に、真っ赤になったヒロさんに思いっきり頭を殴られてしまった。
「いてっ!」
「てめぇの頭は、そればっかかよっ///そんなんじゃ、星見るたび思い出しちまうじゃねぇかっ!」
「…すみません。」
……それでも、綺麗な星空を見た時に一番に俺を思い出してくれるなら…嬉しい。
(おわり)