エゴエゴ

□ボクのパパとお父さん7
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「パパ。…ボク、明日から幼稚園お休みです。」

「…そうか。もう夏休みだな。」

「はいです。」


晩ご飯の後、ソファーで読書タイムのパパに報告しました。


「…で?夏休みは何かしたい事とかあるか?」


「プールに行きたいです。練習して泳げるようになりたいですー。」


「ふーん。…プールなぁ…。よしっ!じゃあ明日、一緒に行こうか。」


「…でも、…パパ泳げるですか?」


「…まぁ。一応な…。」

………初耳です。パパすごいですー。


ボクが驚いていたら、お父さんが帰って来たので玄関にお迎えに行きました。


「お父さん、お帰りですー。」

ピョンと、お父さんに抱きつくボクを軽々と抱き上げてくれました。


「ひろ、ただいま。ヒロさんは?」

「いるですー。明日、プールに行く約束したです。」


「…プール?」

…あれ。お父さん…どうしたんですか?


お顔が固まっています。

「ヒロさんっ!明日プールに行くんですかっ?」


「うん。ひろに水泳教えてやるんだ。」

「…どうしよう。俺、明日仕事だし…。」


…あの…なにか問題でも?


「別に…オレだけで大丈夫だぞ?」


「だって、ヒロさんもプールに入るんですよね?」


「…あたりまえだろ。何言ってんだお前…。」


「ダメです。明後日にして下さい。俺、休みですから一緒に行けますから。」

…あ。ボク賛成です。お父さんも一緒の方が楽しいですし…。


「なんだよ。ひろに泳ぎくらいオレ教えられるし…。」

「そうじゃなくて…。不特定多数の人がいるんですよ。ヒロさんに何かあったら…大変です。」

…あの…何かあるんですか?


「…何かって、何があるんだよっ。お前わけわかんねぇ。明日行ってくるからっ。ひろとも約束したし。」

「ヒロさんっ!」

……なんだか、雲行きが怪しくなってきました。

「…あの…ボクいつでもいいです…けど。」


「…ひろ。ちょっとお部屋に行ってなさい。」


そう言って、お父さんは笑うけど

…目が…全然笑ってないです。

「あの…ケンカするですか?ボクがプールに行きたいって行ったから?」

キョトンとしたお父さんは、ボクにこっそり囁きました。


「違うよ。明後日3人で行けるように、ちょっとおまじないするんだ。」

「………おまじないですか?」

「…そうだよ。おまじない。明後日3人で一緒に行った方が楽しいだろ?」


もちろんですー。

「はいです。ボクお部屋に行ってるですー。」


「ごめんね、ひろ。あとで本読んであげるね。」

「大丈夫ですー。ボク1人で眠れるです。」


…なんとなくですが、2人っきりでお話した方が良いような気がします。

「パパ、お父さん、おやすみなさいです。」


「うん。おやすみ。」

ボクは、パパとお父さんにご挨拶してお部屋に行きました。




ボクがお布団の中に入ると、パパの声が聞こえて来ました。


「…野分。なんのつもりだ?」

「ヒロさんこそ、プールに行って何かされたらどうするんですか?」

「だから、お前のいう何かってなんだよ?」


「人前で肌を晒すことになるんですよ。誰かに触られたらどうするんですか?」

……確かに。

パパは綺麗なので、幼稚園の先生や、お友達のママやパパもチラチラと見ています。パパは気づきませんが触ろうとする人もいます。


「はぁ?オレに触るやつなんてお前くらいなもんだぞ。ふざけたこといってんじゃねぇよ。」


「ヒロさんっ!」


「絶対明日行くっ!」


「…どうしても行くつもりなんですね。…わかりました。」


「…な…なんだよ?…あっ!…こら野分っ…やめろ…っ」

「いっぱいつけて…明日は諦めてもらいます。」

………お父さん…何を付けてるんですか?おまじないっていうくらいでしから……魔除けのお札…とかですか?


「…ぁ…んっ…///。野分…そんなとこに…つけるな…って……舐めるなっ!……噛むなっ…ぁっ」

………つける?…なめる?…かむ?

………お父さんのおまじないって…どんなものなんでしょうか。

「ヒロさん…可愛いです。」


…お父さん…パパになにしてるですか?





次の日の朝…眉間にシワを寄せたパパから

「ひろ。ごめんな…プールは明日いこうな。」

「ボク…いつでもいいです。」

………お父さんのおまじないが効いたです。


「ひろ。明日一緒に行こうね。」

お父さんがニコニコと言いました。

「はいですー。…ところでお父さん…パパに何をつけたですか?」


「…ああ。それはね…愛のしるしだよ。」

「…しるし…ですか?」

「そうだよ。悪い虫がつかないように…ね。」

「お父さん…すごいですーっ!」

……虫除けスプレーいりませんね。


「ボクにも、今度つけて下さい。」


「え?…あっ…と…それは…ヒロさんにしか効かないんだ…。」


「…そうですか。残念です。」

「ひろも、大きくなって好きな人が出来たら…いっぱいつけてあげるんだよ。」


「野分っ!…てめぇはつけ過ぎなんだよっ!」


ボクは…ひとつだけにしようと思います。


…とにかく、明日のプールが楽しみです。



+おわり+



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