エゴエゴ

□ボクのパパとお父さん19
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「…さぁ…ひろ。歯をくいしばれ。」


ペンっ

ペンペンペンっ

歯をくいしばっても、お尻は痛いですー。


「わーん。パパごめんなさいですーっっ!」


「こんにゃろっ!悪さをするやつは、お尻ペンペンだっ!」


ボクは今、パパに怒られています。

それは、なぜか…。

パパの本の中にあった絵を、クレヨンで染めてしまったから…。

「あれは、パパが大切にしてる本なんだぞ。それをぬり絵にするやつがあるかっ。」


「ごめんですー。もうしないですーっ。」


だって、綺麗な絵が描いてあって…つい…。



ペンっ。


…うー。

最後の一発…一番効いたです。



ボクが悪いことをすると、パパはお尻をペンペンします。

数は5回と決まっているのですが、

滅多にペンペンされることのないボクです。



「…いいか、ひろ。本は大切にしないとダメだぞ。」

「はいです…。もうしないです。ごめんなさいです。」

ボクがお尻をさすりながら謝ると、パパは頭を優しく撫でて「うん。」と頷きました。



そんなパパに手を伸ばして

「……パパ…抱っこ。」

と、おねだりすると…にっこり笑ったパパはヒョイと抱き上げてくれました。


「パパ…大好きですー。」

パパの首にしがみつくと、ぷにぷにと柔らかいところがあたって思わず、ちゅーっ…と吸い付いくと…パパは、くすぐったいと言って笑いました。




すると、ガチャンと玄関の開く音がして…

「ただいまです。」


玄関からお父さんの声がしました。


「あ、お父さん帰って来たです。」

「…ああ…そうみたいだな。」

お父さんは、しばらく病院が忙しくて帰って来れなかったのでパパも嬉しそうです。


「お父さん、お帰りなさーい。」

「ひろ。ただいま。」

パパの抱っこから降りて、お父さんのもとに行くと…

ボクの頭を撫でたあと、パパを見つめて…そして

……固まりました。





「ヒ…ヒロさんっ!それ誰に付けられたんですかっ!」


「は?…なんの事だよ。」



………マズいです。

お父さんが言ってるのは、パパの首についた小さな赤い跡の事で…


原因は…たぶんボク…。

「……あの…お父さん…それ…」


「ちょっと、ひろは黙ってて…。」


………完全に頭に血が昇ってるです。



「あの…お父さん…」


ボクの話を…


「ヒロさん、ちょっと来て下さいっ。」

「だからっ!何をそんなに怒ってんだよっ。」


ボクから手を離したお父さんは、

「ひろ。ここでお利口さんにしてるんだよ。」

とても穏やかな口調のお父さんですが…

「…あの…お…お父さ……」

笑った顔なのに…目がすわってて…こわいです。


「いてぇよっ!離せバカ野分っ…!」


パパの手をガッチリ掴むとお父さんのお部屋に引きずって行きました。


わけを話そうと、お父さんの後を追いかけましたが、


…カチャ。


あ"っ。

か…鍵をかけられてしまったですーっ!

「お父さん、パパっ!」

ドアの前で呼びかけると

「ひろ。お父さんはパパに、ちょっと大切なお話があるんだ。向こうへ行っててくれる?。」


ドアの向こうから、お父さんが答えました。

「……はいです。」


…パパ…叱られたらどうしよう…。

ボクは心配で心配でしかたありませんでしたが、とりあえず居間へ戻ることにしました。




ソファに腰かけると、お父さん達の声が聞こえてきました。



「ヒロさん、しばらく俺が帰れなかった事は謝ります。でも…だからって…浮気するなんて酷いじゃないですか。」


「はぁ!?…う…浮気ぃ!?なんの話だよ?」

「惚(とぼ)けないで下さい。そのキスマークが何よりの証拠ですっ!」

「知らねぇよっ!キスマークなんかあるわけないだろう!」

………どうしよう…ケンカになってしまいました。

ボクは、居ても立ってもいられず、お父さんの部屋の前まで来てしまいました。

「ここについてますっ!」

「……ぅわっ…。ばかっ!なに…す……野分っ……おいっ…のわ…///」

「ほら、ここにっ!」

「へっ?…ここ?」

「そうです。ここですっ!」

……そこ、ボクです。ほとんど事故のようなものです。


「ここは、さっき…ひろが吸い付いて来たとこだ…。」

「…えっ?…ひろ??」

……そうです。ボクです。

「……じゃあ、これは…ひろが…?」

「…そういうこった。」

「……すみません。俺…。」

良かった…誤解がとけたみたいですー。


「…ばかやろ。お前がいるのに、浮気なんかするわけないだろ///。」

「…ヒロさん。」

「…野分…。」

………なんだか

…いちゃいちゃしそうな雰囲気なので、ボクは居間に戻る事にしました。



…しばらくすると、ペンペンする音が聞こえてきました。

きっと、早とちりしたお父さんが叱られてるです…。


「……ぁ……っん…野分…。」

…あれ?

……パパの声?

「…っあ…野分……もっと…ゆっくり…ぁっ…ぁ……///」

…パパ、ゆっくり叩いても痛いのは同じですよ。


「…どうして?。ヒロさん…とっても気持ち良さそうなのに…。」



「……久しぶりだから……ぁ…はぁ…はぁ…っ」

「そうですね。最初から…こうすれば良かったです。そしたら…すぐにわかる事だったのに…。」


………ペンペンしたですか?


「…ぁぁ…野分…っ…」

お父さん、ペンペンは5回って決まってるですよ?

そんなにペンペンしたら、お尻痛くなっちゃうですよ?。


「…ぁ…ん…っっ…野分……いい…ぁっ…///」



………………。

…パパが、いいなら…いいんですけど…。







ボクが、レンジで温めたミルクを飲み終えた頃…


お父さんの部屋のドアが開いて、パパが腰を抑えながらお父さんと一緒に出てきました。


「パパ…お尻大丈夫ですか?」

「えっ///……ああ…大丈夫…。」


「お父さん、ペンペンは5回って決まってるですー。」


「……ペンペン?……ぁあ…あれはペンペンじゃなくて、セック…っ…と…。」

お父さんは、慌てて口元を押さえました。



「…野分…それ以上言ったら…承知しねぇぞ。」

「くすっ。…わかってますよ。」


そう言って、お父さんはパパにキスをしました。



ケンカしても、すぐに仲直りするパパとお父さんは、本当に仲良しです。


でも…ペンペンじゃないなら、あの音は何だったのでしょうか…。






+おわり+



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