エゴエゴ

□ボクのパパとお父さん18
1ページ/1ページ




「お父さん、ボク桜が見たいです。」


ベランダで洗濯物を干していたお父さんを見上げてお願いしてみました。

「…桜?まだ少し早いんじゃないかな。」


「公園にある桜が咲いてたって、幼稚園のお友達が言ってたですー。」


「へぇ。…そうなんだ。じゃあ、散歩がてら…見に行こうか。」

ボクの頭を撫でながら、お父さんが優しく笑いました。



「ついでに、夕飯の買い物もな…。」


キッチンで、食器を拭いていたパパがコップに曇りがないか確認しながら、そう言いました。



「はいですー。」






お昼過ぎに、桜を見に3人で家を出ました。


「…で、ひろ、どこの公園なんだ?」

手を繋いでいたパパに聞かれました。


「……どこの…?…あれ、そこまで聞きませんでした。公園ってしか…。」

…わからないです…。


ボクが、しょんぼり俯くと

ふわりとパパが抱き上げてくれました。


「くすっ、大丈夫だよ。」

目線が同じくらいになったパパがボクの頭をグリグリ撫でました。


「幼稚園の友達が見たなら、この辺の近くなんじゃないかな。」


キョロキョロとお父さんが桜の木を探してくれますが、枝にはちっちゃな蕾がやっと芽吹いたくらいで…。


「ごめんなさいです。お花咲いてないです…。」


「別の公園探そう。そっちかもしれないし…。」

ボクがしょんぼりした顔をするからか、お父さんがそう言ってこの先にある公園の方向を指さしました。


「…でも、遠いです…。」

ボクが遠慮すると、


「俺が行きたいんだ。ヒロさん、いいですか?」


パパにお伺いをたてると

「…この先の公園って……。」

「はい。…あの公園です。」


…ボク…わかりません。


「お父さん、その公園って…何かあるですか?」

既に、その公園に足は向いていました。


「うん。ヒロさんとの思い出の場所なんだ。」


「思い出の場所ですか?」

「うん、そう…。」

お父さんは、幸せそうに微笑みました。

パパは…眉間にシワがいっぱいです。



「…た…楽しみですー。お花咲いてるといいですー。」


「くすっ…そうだね。」

パパの腕から降りて、お父さんと手を繋ぐと…反対の手をパパが握ってくれました。







公園につくと、なぜか真っ直ぐ一本の桜の前まで来たお父さんが、


「ヒロさん…この木でしたよね?」

そう言って、桜の幹に手を置いて見上げました。


「………そうだった………かも…。」

…この木ですね。


頬を染めて、こういう返事をするパパは、

十中八九間違いないです。

…と言ってもボクには、何の事かわかりませんが……。



「この桜の木も…まだ咲いてないです…。」


「…そうだね。」


「お父さん…この桜の木が思い出ですか?」


「うん。ヒロさんと俺が約束した桜なんだ…。」

「約束ですか?」


「…ずっと、一緒にいよう…って誓いをたてた木なんだよ…。」

お父さんは、その木を優しく撫でました。


「ロマンチックですー。」


でも…以外です。

お父さんは、ともかく…パパは照れ屋さんなので、そういう事は出来そうにもないですが…。



「…あれから…何年経ったかな。」


パパが、眩しそうに桜の木を見上げると


「あれ?。…なぁ、あれって桜の花じゃね?」

パパが指さす先の延長上を、お父さんと2人で目を凝らすと

「あーっ!あったです。桜、ちっちゃくて可愛いですー。」


「……ホントだ。」

お父さんもご満悦です。


「お父さん、もっと近くで見たいですー。」

肩車をせがむと、ヒョイと抱っこしてくれたお父さんは、

「やっと見つけたんだもん。もっと近くで見たいよな…。」

頭を撫でてくれたお父さんは、ボクを肩に乗せてくれました。


「お…おい。危ねぇだろっ。ひろを落とすんじゃねぇぞ。」

パパが慌てて手を伸ばすと、

「大丈夫ですよ。」

お父さんが、ボクを肩に乗せたまま笑いました。

「はい。大丈夫ですー。ちゃんと掴まってるですー。」

そう言って桜の花を見ると、2つ寄り添うように咲く花の横に、ぷっくりと膨らんだ蕾がありました。


「…ボク達みたいですー。」

何気なくボクがそう言うと、



「くすっ。…そうだね。すごく似てる。」

お父さんが、とっても優しい顔で笑いました。

「このちっこいのが、ひろだ。」


そう言ったパパは、ふっくらと色づいた蕾を指さしました。



「………ねぇヒロさん。今度は、3人でこの桜に誓いませんか?」


お父さんは、そっと手のひらを木に押し当てました。

ボクがパパの方に顔を向けると、

「ひろは、野分の手の上に手をおいてみろ。」


「ボ…ボクもですか?」

「あたりまえだろう。……ほれっ、早く。」


「は…はいですっ。」

急いで伸ばした手の上に、パパが重ねました。


「…よし。」

パパが小さく笑うと、



「………愛するヒロさんと…ひろと…来年も再来年も…この先ずっと一緒にこの桜の下で花を見る事が出来るように…。」

「はいです。誓うですー。」


「……以下同文…///。」

最後にパパが小さく言いました。


「お父さん〆(しめ)はやっぱり誓いのキスですー。」

お父さんは、目を丸くして…

「バカ言えっ///。出来るかっ!んなもんっ。」

…パパは予想通り怒鳴りました。



「出来るですー。」

ボクは、パパの肩に移るようにしてお父さんとパパの頭を隠しました。

「ひろ…ありがと。」

「ひろお前、…小技がきくようになったな。」


えへへ…///。褒められたです。

嬉しいけど、この体勢は…はっきり言って怖いです。

「パパ、お父さん…早くするです…。ボ…ボク落っこっちゃうです…。」

「あぁ…ごめん、ごめん。ヒロさん、ジッとしてて下さいね。ひろが危ないですから。」


お父さんは素早く、ちゅっ…っと触れるだけの軽いキスをしてボクを肩から下ろしてくれました。

「もう…おしまいですか?」

「うん。後は帰ってから、ゆっくりするか……っと…っ……い…いてて…っ。ヒ…ヒロさんっ痛いです。」

「てめぇの脳みそは、一足早く春が来たようだな……///。」


パパは微笑みを浮かべて、お父さんの頬っぺを、びょ〜んと延ばしました。


…お父さん、かわいそうです…。


でも、来年も再来年も、その後も…桜が咲く度にここに来る約束をしたです。

満開になったら、もう一度3人で来たいですー。



+おわり+



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ