エゴエゴ
□ボクのパパとお父さん15
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「ひろ、そのチョコ溶かしてくれ。」
「はいですー。」
ボールの中に細かくしたチョコを湯煎して溶かすのが、ボクのお仕事です。
今日は、パパとお父さんと一緒にバレンタインのチョコを作ります。
バレンタインデーとは、好きな人にチョコをあげる日なんだそうですが…
その日は、お父さんお仕事でいないそうで、急遽一週間繰り上がりました。
パパは「別に無理にしなくても。」と言っていましたが…お父さんが「どうしても」と譲らず…今に至っています。
愛の告白は毎日のようにしているお父さんですが、バレンタインは特別なんだそうで…。
ボクも頑張ってお手伝いするですー。
「あ、ヒロさん…頬にチョコついてます。」
「マジ!?はじいたのかな?」
「とってあげます。」
そう言ってお父さんは、パパの頬っぺをペロッと舐めました。
………ウソです。
パパの頬っぺにチョコなんてついてないです。
ボクがジッと見つめていると、お父さんが気づいてニッコリ幸せそうに笑うので、内緒にする事にしました。
トロトロになったチョコに溶かしたバターをいれて、生クリームを加え混ぜるとお父さんが、型に流し込みました。
「このチョコ…固まるですか?。」
「うん。冷やすと固まるよ。」
お父さんが教えてくれました。
「そうですか。早く食べたいですー。」
すると、お父さんは
「ひろ、バレンタインデーは、好きな人にチョコをあげる日なんだよ。」
と、教えてくれました。
…そうなんですか?
「ひろは、幼稚園にドキドキするくらい好きな友達いないの?」
お父さんに聞かれてボクは考えました。
「好きな友達ですか…?…ドキドキする人ですか?…いないです。」
あげる人いないです。せっかく作ったのに、がっかりです。
「つか、世間一般のバレンタインは男がもらう日だろ。」
パパは、ため息混じりにツッコミをいれました。
「あ…そうでした。じゃあ、ひろの一番大好きな人にあげたら?せっかく作ったんだし…。」
お父さんが、アドバイスしてくれました。
「一番大好きな人ですか?パパとお父さんですー。」
「じゃあパパと一緒だ。」
「ヒロさんっ!嬉しいです。俺もです!」
ぎゅーっと、パパを抱きしめて頬をグリグリしました。
「おいっ///。野分やめろって。」
「あっ、パパ照れてるです。」
「ひろまで、何言い出すんだっ///。」
パパのお顔真っ赤ですー。
しばらくして、冷蔵庫からチョコを取り出してちゃんと固まっているか確認して、長四角に切ったチョコにココアパウダーをつけて、白いお皿にのせたら完成です。
「出来たです。早く食べたいですー。」
「うん、食べよう。はいヒロさん、あーんってして下さい。」
お父さんが、チョコを一つ摘んでパパの口元にもって行くと
パパは、口をへの字にして開いてくれません。
…こう言っては何ですが
………予想通りです。
ここはひとつ、恥ずかしがりやのパパのために、ボクが一肌脱ぐです。
「はい。ボクは何も見えません。」
自分で目隠しすると、
「ひろ、ありがと。」
お父さんの声が聞こえて、ちゅっ…と優しい音がしました。
とっても、とっても優しい音と…
「ヒロさん愛しています。…ずっと…ずっと、ヒロさんが好きです。」
お父さんは何度も繰り返しました。
「ひろ、もういいよ。」
「はいです。」
両手を下ろすと、耳まで真っ赤になって俯くパパがいました。
「パパ?」
「え?あ…///。ひ、ひろもチョコ食べろ。結構美味いぞ。」
「はいですー。」
お楽しみのチョコを口に入れると…
「っ!?……にがいです。…あ…でも甘いです。」
「あぁ。ココアパウダーだね…大人の味ってところかな。」
お父さんはそう言って、チョコを一個お口にいれると笑みを浮かべました。
パパは…と言えば、「…甘いな。」と一言だけ。
…その日の夜
「ヒロさんの…熱い。…中…トロトロですよ。」
「…お前が…そういう事するからだろ…///」
…ああ…チョコ作り直してるですか?
パパは甘いって言ってたです。
「ヒロさん…どこもかしこも…甘くて美味しいです。」
「……ぁ…///…そこ…舐めんな…。」
お父さん…味見過ぎると虫歯になるです。
「でも…ヒロさんのここ…欲しいって言ってる。」
パパも虫歯になるですよ…。
「…あ…っ…野分…っ…もっと…欲し…。」
「ヒロさん…すごい。俺の全部飲み込んでるのに…。…いいですよ…好きなだけ味わって…。」
……パパって、ホントはチョコ大好きなんですね。
「お父さん、おはようです。…パパは?」
「そろそろ起きて来ると思うんだけど…。」
チラッとパパのお部屋を見ました。
「夕べ、チョコ食べ過ぎたですか?……パパ、もっと欲しいって言ってたです。」
「あぁ、それは俺の………。」
「野分ーっ!!。」
腰を押さえながら朝からテンション高いパパでした…。
+おわり+
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