エゴエゴ
□ボクのパパとお父さん12
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「ひろ、明日…何に出るんだ？」
パパと２人で夕食を食べていたら、明日の運動会についてパパに聞かれたので
「えっと…。かけっこと、借り物競争です。」
「そっか。パパ達の出番あるかな？」
…幼稚園の運動会なので…ないと思います。
「あるとすれば、借り物競争くらいだと思います。それよりパパ…明日お父さんも来てくれるですか？」
お父さんは今日もお仕事で…まだ帰って来ないです。
明日はお休みって言ってましたが、この間もお休みの日に病院から呼び出されてお休み返上になりました。
「大丈夫だよ。明日は、ひろの運動会だから、絶対休みとるって行ってたし…。」
「はいです。」
お父さんにも来て欲しいです。
その日の夜…。
「ヒロさん…いいですよ…いって下さい。」
…あ…お父さんの声がする。帰って来たですね。
「…ぁ…んっ…ゃだ…なんでオレばっか…。」
「じゃあ…もう少し、頑張ってください。」
ギシギシと何かが揺れてる音がするです。
…なんだろう？
借り物競争の練習でもしてるですか？
「…ゃっ…ぁ……野分っ……。」
……パパ…くじけそうなんですか？
「…ぁあ……野分っ……一緒に…っ。」
「…いいですよ。一緒にいきましょう…。」
「……っぁ……あ……いい…野分っ。」
「…ヒロさんっ…。」
パパ達が出るって決まってるわけじゃないのに…
…練習熱心です。
ボク…明日の運動会頑張るです…。
運動会の朝、お空は快晴ですー。
「ひろっ。頑張れよ。」
「はいです―っ！」
パパが、かけっこの順番を待っていたボクを応援する声が聞こえるです。
ドキドキですー。
「よーい…、」
パーンというスタートの音。
…転んでしまいました。
…い…痛いです。
ヒリヒリするです。
涙出そうです。
「ひろ、泣くなっ。ビリだってかまわないから、最後まで走れっ！」
…パパ。
「ひろ。頑張れー。」
……お父さん。
一生懸命走ってゴールすると、パパとお父さんがいっぱい拍手してくれたです。
「ボク、ビリでした。」
「偉いぞ、ひろ。」
パパは、ぎゅっとボクを抱きしめてくれて…、お父さんは、いっぱい…いっぱい…頭を撫でてくれました。
……ちょっと恥ずかしいです。
「次は、頑張るです。」
「おう。がんばって来いっ。」
「はいですっ。」
借り物競争は、スタートして拾ったカードに“大好きな人”って書いてありました。
パパとお父さんの所へ迷わず走って行きましたが、
「野分、行ってこい。」
「何言ってるんですか、ここはヒロさんが…。」
……ボク一番になりたいです。
「２人とも来るです。夕べ練習してたです。一緒にいくって！」
「「………えっ///？」」
ボクは、２人の手を掴み引っ張りました。
「ボク、一番になりたいですーっ！」
なぜか、真っ赤になったパパの手を握り、笑いを噛みころしたお父さんは、ボクを抱っこしてスクっと立ち上がると、猛スピードでゴールしました。
「やったですー。１番ですっ！パパ、お父さん、ありがとうですー。」
「おう。」
「ひろ、良かったね。」
「はいですー。夕べ練習した甲斐がありましたね。」
パパとお父さんに賛辞を贈ると…
「いや…あのね。夕べのは、練習じゃな……いてっ！」
「…パ…パパ…？」
お父さんの後頭部目掛けてパパが拳を振り下ろしていました。
「…野分……練習じゃなくて、一体なんだと言うつもりなんだ？」
「…いえ。……あの…借り物競争です。」
お父さんは、頭をさすりながら納得のいかない顔をしていました。
鼻息を荒くしたパパに凄まれて、お父さんはタジタジです。
「……ったく、油断も隙もありゃしねぇ。」
パパは、そう言いながら腰を叩いて観覧席に戻って行きました。
パパ…腰痛いですか？
運動不足ですか？
「パパ、腰痛いんですかね？」
「…うん。…昨日ちょっと使いすぎちゃったから…。」
「そうなんですか。パパは頑張り屋さんですから、ほどほどにしないとですね。」
「くすっ…そうだね。」
お父さんと２人パパの後ろ姿を眺めました。
運動会が終わっての帰り道…。
借り物競争のカードを見ながら、パパとお父さんに聞きました。
「お父さんは“大好きな人”のカードを引いたら誰の所に行くですか？」
「それはもちろん…ひろとパパの所に決まってるよ。」
お父さんは、にっこり笑ってそう答えてくれました。
「パパは？」
「…オレも…同じだ。」
パパは、はにかみながら答えてくれました。
みんな一緒なので、また一番になれるですね…。
来年は、パパ達の借り物競争があるといいな。
そしたら、いっぱい一番になれるですー。
＋おわり＋
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