エゴエゴ

□ボクのパパとお父さん4
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パパとお父さんが揃う夜は、滅多にありません。


夕飯はパパと2人で食べる事が多いです。

3人揃って食べれば、ご飯がもっと美味しいと思うのですが…。



「ヒロ、ご飯ついてるぞ……。」


パパは、ボクのほっぺに付いたご飯をとってくれます。

「パパ、ありがとうです。」


「うん。いっぱい食べるんだぞ。」

「はいですー。」

………ふつうは、ほのぼのした食卓の光景のはずなのですが…。



「……ヒロさん、ご飯粒ついてます。」

優しいお父さんは、パパの口元についたご飯粒を取ってあげるのですが、

「…知ってるっ///。今、取ろうと思ってたんだっ!」


………パパは眉根を寄せて怒ります。

「ヒロさん…可愛い。」

…お父さんは、学ぶ事を知らないのでしょうか?

……ゴキッ。

………それは…とても…鈍い音です。


それを言われるとパパは、必ずといってよいほど殴るのに…。


でも、お父さんは何故か自然にそれを受け入れます。



………ご飯を食べている時は…いつもこんな感じです。





…なのに、夜更けになると、不思議な事が起こります。



「…ヒロさんのここ…スゴく可愛いです。こんなに固くなって…。」


「…ぁ…ん…野分……やめろって…。」


「……ぷっくりして……ほら…こっちも…とっても可愛い…。」


「……んっ……あんまり…いじるなよ……」


「ダメですよ…今夜は、ゆっくりとヒロさんを可愛がってあげたいんです……。」


「……あ…っん……噛むなよ…。」


「どうして?…ヒロさん…こんなに気持ち良さそうによがるのに…。」


「だからだよ。…そんな風にされ…たら…ぁ。」


………パパは、怒りません。



……もちろん…殴る時の…あの鈍い音も…。


どうしてでしょうか?





明くる朝、お父さんに聞いてみました。

「お父さん、夕べパパに゛可愛い"って言ったのに…怒られなかったですか?」


「もちろんだよ。」


「どうしてでしょう。夕飯の時は、パパに殴られたのに…。」


「それはね…パパを愛してあげていたからだよ。」


「そうなんですか。ボクは…てっきり『スゴく』とか…『とっても』とかを…可愛いの前につけると、パパは喜ぶんだと思っていました。」


「…ヒロ…。パパの『よろこぶ』は『喜ぶ』じゃなくて『悦ぶ』だよ。」

お父さんが人差し指を立てて、ウィンクしながら小さく笑うと…


「のーわーきーっ!てめぇ、ヒロにおかしな事を教えるんじゃねぇっ!」

「ヒロさん、やめて下さい。…痛いです。」


………仲は良いんです。

ホントです。


…ただ


お父さんの言葉のニュアンスが少しだけ違うようなのです。



………でも、猛獣のように暴れるパパに…愛してると囁いて、抱きしめて…キスすると、

あんなに暴れていたパパが耳まで赤くなり大人しくなってしまいます。



「ヒロ…おいで。」


お父さんに呼ばれたので、そばに行くと…頬を赤く染めたままのパパが抱き上げてくれました。


「いいか、ヒロ。日本語というのは、とても奥が深いんだ。…使い方を間違えちゃダメだぞ?」


「はいですー。」


「ヒロさん、俺…使い方間違ってません。」


「野分、てめぇはヒロに使っていい漢字を覚えろ…。」


「はい。すみません。」


なんだか…こんな朝が大好きです。



+おわり+




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